浮気男の勤務先調査のために僕はネットで見つけた探偵事務所を訪れた。
HPを見る限り2万5千円~調査をしてもらえるとか。 勤務先さえわかれば浮気男の給料を
差押できるので、費用の大小はなるべく考えないようにした。
都心の汚い雑居ビルに、その探偵事務所はあった。薄暗い長い廊下を抜けて、僕は事務所
に入った。事前にアポをいれていたので、すぐに応接間に案内されたが、そこは外の汚い空間
とは異なる小奇麗な部屋だった。以前、使った調査会社もそうだが、この種の商売も客商売だから
応接間のイメージを重要視するのかもしれない。
僕が部屋に通されると、部屋には二人の男性が席に座っていたが、僕をみるなりおじぎだけして退室
された。「あの、二人は業界でも有名な探偵さんなんですよ」スタッフの女性がそう説明してくれた。
一人はヤクザのような風貌の中年男性。もう一人はマイク真木のような、自由人っぽい初老の男性だった。
そうこうしてる間に調査カウンセラーなる方が入ってきて、要件を説明することになった。浮気男の勤務先
調査を依頼することをポイントに大まかな経緯を話した。
「住所も本籍も携帯番号もわかってるんだから簡単ですよ。これは尾行ですかね。
まあ、時間制でチャージするから所要時間×2万5千円と考えて下さい。」
「以前、別の事務所で本籍がわかれば勤務先はデータベースからわかると聞いたんですけど、
尾行ですか?」と僕は素朴な疑問をたずねた。
「データベース??それは、社会●険庁の人に、その事務所の方がお金を払って聞いていたんでしょうね。
よくあるんですよ。社会●険庁に知合いつくって、金の見返りに個人情報を引き出す手口。でも昨今の問題
で、その手口が使えなくなっちゃったんですよね。それで小遣い稼ぎしていた事務所にとっては痛いですね」
「へー、そうだったんですか。ところで尾行だと、指定した時間に会社に行かなければ調査できなくなりますよね
その場合はどうなるんでしょう?」
「お客様の自己責任なので、そういうことがないよう日時を指定して下さい」カウンセラーはそう言った。
非常にニコニコしている方だが目は鋭く、笑ってないのが印象的だった。
「じゃあ、早いとこで明後日の朝3時間ほどお願いします」僕はその場で手続きを済ませた。
後日談になるが、僕はその場でカードで代金を決済した。カードの引き落とし明細をみたら、引き落とし先は
海外でのショッピング扱いになっていた。探偵事務所はどんなところにも足跡を残さないが、ここまで徹底
しているのは流石だと思った。
さて、2日後の朝。例のカウンセラーから電話があった。
「浮気男の勤務先見つけました。会社概要と住所はこんな感じで詳細はメールします。」得意そうに報告して
くれた。
「ここで間違いないんですか?本当に??」僕は本音を聞いてみた。
「はい。うちの探偵はオフィスの中までついっていったので。あと会社に電話してみたらしく浮気男の名前を
伝えたら繋いでくれたらしいです。100%間違いねいですよ」
世の中ってお金を払うと割りと何でもわかるんだ。朝から感心してしまった。
いよいよ、給料差押という強行手段に僕は出ることになった。