美人弁護士が浮気男に質問を開始した。


美人弁護士「あなたは僕さん妻とどういう関係でしたか?」

浮気男   「顔見知り」


美人弁護士「僕さんの妻と不貞した事実は認めますか?」

浮気男   「してないけど」


美人弁護士「ボイスレコーダーで不貞を認めているけど何故?」

浮気男   「原告の僕に密室で脅迫されたからだよ」


美人弁護士「この念書はあなが書いたものなんですよね?」(浮気男が書いた念書を見せながら)

浮気男   「あ~ん?? 全然覚えてねーんだけど」


美人弁護士「僕さんの携帯の脅迫メールを連日送ったのはあなたですか?」

浮気男   「さあー、わかんないなー」


美人弁護士「当時、あなたの代理人だった弁護士が僕さんの代理人をしていた代理人にあなたが

        送ったことを認めるFAXを文書で送ってますけど」

浮気男   「俺、知らないし。かってに、送られたんかもしんねーな」


美人弁護士の質問に対する浮気男の回答は知らない、覚えてないの一点張りで、話にならないまま

終わった。しかし、このようないい加減な対応に対して裁判官の心証は悪くなっているのは素人の僕から

みても明らかだった。


続いて、裁判官からの質問だった。

裁判官  「僕さんに脅迫されて、念書を書かされたと言ってますが何故、逃げなかったのですか?

       テープを聴く限りでは僕さんは何度も書く気がないなら帰れと言っているのに」

浮気男  「・・・帰れないくらい追い詰められたんです」

裁判官  「密室に監禁された言いますが、その場にいた人全員が関与したのですか?」

浮気男  「昔のことなので覚えていません」


裁判官  「わかりました。私からは以上です。これで終了しますが、判決は一ヵ月後に出ますので、

       よろしくお願いします」


一同、敬礼をして法廷は幕を閉じた。力が抜けた。

浮気男は僕のほうを見ることなく、けだるそうに法廷を後にした。僕は何か一言でもぶつけてやりたい思い

だったので、浮気男を追いかけようとしたが、美人弁護士に止められた。

「エレベーターで顔を合わせたら気分悪いし、少し間を空けましょっか」美人弁護士は笑顔でそういった。


僕と美人弁護士が裁判所を出たときには朝の雨も止んでおり、雲の間から陽がさしていた。


「お疲れ様でした。さすがですね。すごい堂々としていたし、裁判官への対応も完璧でしたよ!

負けることはないと思うので、あとは損害賠償がいくらかってとこですね」美人弁護士は歩きながらそう言った。


「なんか、あっという間に終わっちゃいましたね。これで裁判が終わるのかという実感とか全くないですよ」

僕は徹夜明けで朦朧とする意識のなかでそうこたえた。


美人弁護士は僕の背中をバンと叩いてくれた「僕さん!、もう終わったんです。あとは判決だけですよ。

本当におつかれさまでした。とにかく、判決を待って、それから次のことを考えましょうよ!」


美人弁護士に会ってから約1年。彼女はこうやって、いつも僕を精神的に支えたくれていた。

法的なサポートだけでなく、こういった心のサポートが何よりも嬉しかった。


とりあえず。終わった。浮気男と妻の不倫に直面してから2年。


僕の訴訟はもうすぐ判決のときを迎えようとしている。

判決が出たことで心が楽になるわけでもない。何か新しいことが始まるわけでもない。

失ったものを取り戻すことなんてできやしない。


何もないのはわかっている。でも、これで未来に向かって新しい一歩をようやく踏み出せる気がする。