静かに燃える運命の物語

Prologue — 静かな予兆

名前を呼んだこともない。
長く話したわけでもない。
それなのに、視線が触れた瞬間、胸の奥のどこかが“知っていた”。

そこからすべてが始まった。

言葉より先に、理由より先に、
ただ“この人だ”と魂が頷いてしまった――


彼視点 — 気づきたくなかった確信

最初は偶然のはずだった。
同じタイミングで目が合うことも、同じ言葉を選ぶことも。

だが、重なる瞬間が増えるほど、怖くなった。
こんな想いを知ってしまったら、もう以前には戻れないと気づいていたから。

笑った顔に何度も救われた。
ふと落ち込んだ横顔には、手を伸ばしたくて仕方がなかった。
ただの好意なら、こんなにも胸が苦しくなるはずがない。

あなたを想うたび、心の底から聞こえる。

――離れるな。逃すな。これは一度きりの縁だ。

運命なんて信じなかった。
だけど、あなたがそれを“現実”にしてしまった。


彼女視点 — 抗っても戻ってしまう心

どうしてあなたなんだろう。
もっと軽くて、もっと気楽な恋をすればいいのに。

距離を取っても、目をそらしても、
結局、心だけがあなたに戻ってしまう。

名前を呼ばれたわけじゃない。
特別な言葉をもらったわけでもない。
それなのに、あなたの一瞬の優しさが、私を何度も救った。

“この人を好きにならなければ、こんな苦しみ知らなかった。”

そう思う夜ほど、涙の奥で同じ声が響く。

――それでも、あなたがいい。


彼視点 — 離れられない距離

忘れようと距離を置いたことがある。
冷静なふりをして、余裕のふりをして。

けれど、夜だけは嘘がつけなかった。
目を閉じれば、ふとした仕草も、何気ない声も、鮮明に蘇る。

「こんな気持ちは、もう二度と誰にも抱かない」

そう思ったとき、悟ってしまった。

あなたを手放す未来は、どんな形でも“幸福”と呼べない。


彼女視点 — 言えないのに願ってしまう

強がるほど、想いは深くなる。
忘れようとするほど、あなたの影は濃くなる。

もし、生まれ変わってもまた巡り会えるなら――
そんな言葉を本気で願ってしまう自分が嫌になる。

けれど同時に思うのだ。

“どうか次は、あなたの隣にいられる役目で生まれたい” と。

こんな願いをしてしまうのは、きっと恋じゃなく
魂の記憶に近い何かだと感じていた。


交差する沈黙 — すれ違いの中心で

本当は、互いを想っているのに近づけない。

気づかれたら壊れそうで、
気づかれなければ苦しすぎて。

同じ場所で、同じ空を見て、
同じ想いを抱えているのに、言葉だけが追いつかない。

それでも、なぜだろう。
沈黙の奥に、はっきりと確信していた。

“終わらない” と。

この感情は、時に止まっても、消えることだけはないと。


Epilogue — 未来を予感させる約束

いつか、静かな夜の続きで。
いつか、言葉よりも近い距離で。

その「いつか」を信じられるのは、
あなたを諦める未来が一度も思い浮かばないからだ。

今はまだ離れた場所にいてもいい。
まだ名前にもできない関係のままでもいい。

胸の奥で、同じ言葉を抱いているから。

――“次は必ず、同じ道を選ぼう”。

終わりじゃない。
ここから始まる物語の“前書き”として、
静かに二人は歩き続ける。

運命が追いつくその日まで。