宿命。#10 | 湖面を照らす青い月 湖面を渡る青い風

「上手いリゾットの作り方覚えて来た」

「有り難う。でも、今は食べれそうにないんな。昼に沢山食べた

から」

そういう智だけれどいつから食べて無いのか…

生活感の全くないキッチンやシンクに一人で居ることにとうに

限界を超えていたことを実感 した。

「折角だからつくっとく。鍋ごと冷蔵庫に入れておくからあした

温めて…」

と、何気なく開けた冷蔵庫。

そこには一昨日作り置いたカレーが鍋ごと見事に残ったままだった。

おれは黙って鍋を取り出して中味をゴミ箱に空けて鍋にお湯を張った。

泣かない、泣かない、泣かない、泣かない…

泣いちゃ駄目だろ!

二宮和也‼︎

必至に堪えた涕は零れすみ、

智を振り見ればスースーと可愛い寝息をたてていた。

顔色、悪いな。

やつれたな。

声も…喋るのもやっとみたいだし…

ソファーからベッドへとも思ったけど寝られる時にしっかり寝た方がいい。

そう思って、そのままにした。



不意にドアベルがなる。

普段なら気にならない音も病人がいればかなり気になるもので

多少苛立ちながら、でも半分は誰だ?

と不審に思いながら玄関ドアを開けた。

でも、既にそこには誰もいなくて…

少しだけ嫌な予感を感じつつドアを閉めた。