法華七喩(ほっけしちゆ)といって、法華経に


説かれる7つのたとえ話があります。


これはお釈迦様がたとえ話を用いてわかり


やすく衆生に教化した形式で、法華経の各


品でもこの様式を用いてわかりやすく教えを


説いてみえます。


      
       


その中で如来寿量品にもある「良医病子」と


いうとても有名なお話があります。


【昔、一人の良医がいました。


彼はどんな病でも治すことができました。


彼はまた多くの子どもを持つ父でもあります。


彼の旅行中に、子どもたちが何かの中毒に


なり、病み苦しんでおりました。


そこへ父が旅から帰って来ます。


父の姿を見た子どもたちは、苦しみながらも


喜んで父を迎えて、「私たちの苦しみを早く


治してください」と懇願します。


父(良医)は早速、飲みたくなるように、見た


目にもきれいで、よい香りのする薬を作り、


子どもたちにすすめました。


症状の軽い子は、すぐに飲んだので直に


痛みは治まりたが、重症の子は、毒が体に


深く入り込んでいて、心も乱れた状態でいる


ので、薬の色や香りが気にいらず服薬する


気になれず、そのまま苦しむのでした。


良医の父は、どうしたら可愛い重患の我が


たちが薬を飲む気になるのかと悩み、そ


こで一法を講じ、子供たちにこう言います。


「私もこんな老人だから、やがて死ぬだろう


が泣き悲しむな。ここに私が調合した薬を置


くから、飲みたくなったら飲むがよい」と。


そして、彼は遠い旅に出でたのでした。


そして旅先から、人を遣わして「父が死んだ」


と子どもたちに偽りの知らせを送ります。


父の死の報を聞いて、子どもたちは歎き悲し


み、父を恋い慕ううちに、父の最後の言葉を


思い出します。


「ここに薬を置くので、飲みたくなったら、飲


みなさい。」という言葉を。


そうしてやっと、薬を飲む気が起こり、ようや


く病いが癒えたのでした。


父は、この報を聞いて家に帰り、元気になっ


た子どもたちを見て喜ぶのでした。】



        



良医・・・・お釈迦様


子ども・・・凡夫である衆生(私達)


良薬・・・・法華経の真理

      (幸せになるための真理)


このお話から「うそも方便」という言葉が生ま


れたそうです。


この喩え話から、良薬(幸せになるための


真理)はいつでも誰でも服用できる場所に


置いてあるということになります。


そして、お釈迦様は決して亡くなってはみえ


ないのです。


求める者には、その度合いに応じて必ず、


良薬が用意されていて、お釈迦様は凡夫の


求道心をじっと眺めながら導いてくださって


いるように感じるのです。



        



お釈迦様が亡くなられてから二千何百年も


経つ今もなお、多くの人々は病みもがき苦


しんでいます。


物語の中にある真理をみつけていくことに


よって、自分の身近にある良薬に気づいて


行きたいなぁと痛感いたします。