おっす!ヘソクリス様だ。
最近、世間じゃ「アウトドアな過ごし方」とか言って、やたらキラキラしたキャンプだの、優雅なグランピングだの、意識高ぇこと言ってるヤツが多いだろ?フンッ、笑わせんな。あれは本当のアウトドアじゃねぇ。
真のアウトドアってのは、虫に刺され、汗まみれになり、時には命の危険すら感じるのが醍醐味ってもんだ!その先にある、獲物を仕留めた時の高揚感、そしてそれを喰らう時の背徳感…
これぞ、至高の喜びってやつよ!ま、お前らみたいなひ弱な連中には理解できねぇだろうがな。今日も俺様は、そんな生ぬるい「アウトドア」とは一線を画す、ワイルドすぎる一日を過ごしてやったぜ。
五十
ヘソクリスは、再び強面モテ商事の事務所に向かった。そこに待っていたのは、いつもヘラヘラしている猪野べー太郎。今日は神妙な顔をしている。
「ヘソクリスさん……この前、森のキノコ牛を追い払っていただきましたよね?」
「ああ、あれね。なんか最近、俺の肩書き“キノコ牛ハンター”になってません?」
猪野べー太郎は苦笑いしながら続けた。「実はですね、あのキノコ牛が……その、森の外に出ちゃいまして。ちょっとした騒ぎになっちゃったんですよ。
で、マスコミ、警察沙汰になる前にヘソクリスさんに再度お願いしたくてですね……」「討伐ってこと?」
「はい。できれば、バーベキューにでもしていただけると、ありがたいです……」「……バーベキュー?」「ええ、証拠隠滅というか……」
ヘソクリスはため息をつきながら、頭の中で即座に損得勘定を始めた。個人経由だったら臨時ボーナスもらえたのになぁ。
会社経由だとタダ働き同然。しかもバーベキューって。牛の処理までやらせる気かよ。 「えっと、これ、もしかして俺がまたキノコ牛のせいでヤバい目に遭っても、
労災請求も出来ず、会社は知らんぷり?」「まぁ、そうなりますね」「うわ、さすが強面モテ商事。外面だけはピカピカ、中身は泥沼ね」
猪野べー太郎は苦笑いするしかなかった。「とにかく、お願いします。あの牛がこれ以上騒ぎを起こすと、会社の評判が……」
ヘソクリスは肩をすくめ、しぶしぶ立ち上がる。「わかったよ。バーベキューセットも持ってくわ」
「え?本当にバーベキューにするんですか?」 「当たり前だろ。A5ランクだったらどうする? 焼かずに帰れるかよ。
あとエバラ、塩コショウ、にんにくチューブ、炭、着火剤、あと焚き火台、全部用意しとけよ」 「それじゃあ、討伐じゃなくて、キャンプじゃないですか……」

こうしてヘソクリスは、またしてもキノコ牛討伐に向かうのだった。 ヘソクリスはイノシシとキノコが美味いんだから、牛はさぞかしと思うと、生唾が湧いてくるのを抑えきれず、思わずゴックン。