子どもの時になりたかった職業はなかったと思う 高校の面接でも働きたくないと言った覚えがある
働かずにいたけど 何もしないならでて行けと言われ 仕方なく色々な仕事をして 結局 仕事は嫌いだった
一番嫌なのは時間通りに家を出なくてはいけないことで 今はそうしないで済むので 個人年金を支払い 年金もらうまでは働いてよかったと思う
さて 新たな主人公の二郎さんも モラトリアムな青年ですがどうなって行くのか楽しみですねー!
貧乏神と二郎

一
工事現場沿いの道を歩いていた六浪の二郎は、ふと考えた。
「なんで俺、芸能事務所に履歴書送って面接まで行ったんだっけ?」
落ちたこと自体はどうでもいい。問題は、その時の自分の精神状態だ。解せん。
二郎は昔から影が薄い人間だった。褒められることもなけりゃ、いじめられることもない。単に忘れられるだけ。
出席を取る先生でさえ「二郎?」と名を呼んで、手を挙げた瞬間に「転校生?」と驚く始末。
バイト先でも仕事を終わらせると、「誰だ、綺麗に片付けてくれたのは? 」って言うから手を挙げると
「部外者は入るな!」って怒られる。いや俺、雇われてるんだけど。
影が薄いって、結構ストレスなんだよな。だけどだからって、目立ちたさに芸能事務所の面接に行くとか、自分でも怖すぎる。
もしこれが何かの犯罪だったとして、「動機は?」って聞かれたら、絶対うまく答えられない。石抱きの刑されても無理だわ。
そんなことを考えているうちに、何か嫌な気配がして空を見上げた――鉄筋が落ちてきている。
「え、ウソでしょ? 今死ぬ感じ?」
逃げる暇もなさそうだ。反射的に頭を抱えてしゃがみ込む。
「これ、俺の人生初めてのスタータイムが三面記事ってこと?」
情けない笑いがこみ上げたけど、そんな暇もなかった。