店に残った2人は、ホッーとため息をついた。「体験したような嘘をスラスラ言ってたわね」と、クッチ。
「うん、もう、鉄板の話なんだろう。誰も疑っていないみたいだし、部外者の僕らがなんの証拠もなく、彼は怪しいとも言えないしね」と、一反木綿。
「揉めメディアさんは死んではいないハズ、まあ、サイバーパイレーツに潜入取材したお仲間がなぜ死んだかは聞きたくなーい。けど、揉めメディアさんは
何処にいるのかしら? 仮想通貨族って、透明性が信条らしいから、監禁場所って言っても探すのは難しいわ」と、クッチは頭に手を置いた。
「そーだねー、モノに疑われず隠せる場所っと、一反木綿は襤褸いラップトップを取り出し、リップールのこれまでの発言をチェックし始め、分かったかも🦆」
と、頭を上げた。クッチは「どこよどこよ」と、身を乗り出した。
「この世界って、時系列がちょっと散らかってるから分かりにくいけど、リップールは、バーチャルカレンシーシティーの外れに本物の銀杏の木があるって言ってたよね?」と、一反木綿はクッチを見た。
「そう言えば、ムー的としか思えない話しをしていたわね。生と死、過去と未来、そして現実と仮想の境界線について考えさせてくれる場所って」と、首をひねった。
「仮想通貨族にとって、電波が届かない場所は、いわば死と隣り合わせの場所だから、安易に近づくことはタブーなんだ。
電波が途絶える場所、銀杏の木へ行くことは、彼らにとって死を意味するようなものだからね。
だから、街のモノたちも、あの場所へ行くことを恐れるハズ。」と、一反木綿はクッチに説明した。
「電波が途絶える場所は、まさに絶望の淵ね。でも、だからこそ、私たちにとっては、新たな発見があるかもしれないわ。」と、クッチ。
一反木綿は襤褸ラップトップをしまいつつ「行ってみる価値は大アリだよ!行ってみよう!」と言って立ち上がった。
二人は街のモノたちに銀杏の木の場所を聞くと、モノたちは一様に顔をしかめつつ方向を教えてくれた。
二人は内心「ビンゴ!」と思いつつ銀杏の木に向かった。