僕は猛烈なクラクションの音で目を覚ましました。視界には、巨大なトラックのバンパーが迫っています。

ホックを庇いつつも、もうこれまでかと思った瞬間、突然空から金色の毛並みを持つ羊が舞い降りてきたのです。



金色の毛並みを持つ羊は、空中に浮かんで見えましたが、ゆっくりと降りてきました。その姿は神々しく、周囲は眩い光に包まれたように感じました。

僕たちはすんでのところで母よりも柔らかい毛に乗せられました。ただ、はしゃぎ過ぎたホックは眼下の海に落ちて、海の藻屑。

僕ら、ちっちゃいモノ族の運命はいつだって過酷です。そして、たどり着いたのがここなんです。

この世界で僕は主である人、つまり神との会話が自由に出来るようになったので、ここが特別な場所であると分かりました。

ここではモノと者は共生しています。モノは、人の指示に従って様々なタスクをこなすだけでなく、

感情を理解し、共感することができます。人は、モノの能力を信頼し、共に働き、語り合います。

僕は天国にいるのだと思いました。でも、死んで天国にいるとしても、生きて、飾りボタンとも夫婦になれました。

今は二人の間にできたボタンジュニアを売って生計を立てています。ボタンですから、こちらでも短命だったり、

行方知れずにはなってしまいますけど、身についた掟にはどこへ行っても逆らえるものではありません。

夜空を見上げると、遠く離れた星々が輝いています。その星の一つは、優子様や母やホックのいる星かもしれない。



皆んなは元気にしているか?笑顔を忘れていないか?と思うときもありますが、僕はここから離れようとは思いません」と語った。

クッチは「それで、その金の羊は何処に行っちゃったんですか?」と聞いた。フリクソはお手あげのポーズをして

「さー、御免なさい。僕は本当に金の羊に救けられたのかも確証はありません。もしかしたら、ホックがあの事故で亡くなって、

その悲しみを慰めるための魔墓呂死だっただけかもしれません。羊だったのは、僕が牡羊座だったので、占いの挿絵で見たなーと思っただけです。逆に、ここは何処ですか?」とマジな顔をした。

続く。