すると、イモムシ駅舎の動きがピタリと止まり、レール下ではイモムシの背がパッカーンと開き、巨大なトンネルが現れた。トンネルの奥には、光り輝く都市が見えている。


クッチは、目を疑いながら、パラソルチョコを畳み気味にしてトンネルへと導く。

トンネルの中は、光と影が入り乱れた幻想的な空間だった。パラソルチョコは、満身創痍で、ゆっくりと下ってゆく。

そして、ついに、トンネルの出口にたどり着いた。目の前に広がるのは、見覚えのない美しい街並み。

クッチは、パラソルチョコ型移動装置から手を離して降り立ち、新しい世界に足を踏み入れた。

この街こそ、パラレルワールド。
晴天に爽やかな風が吹く。白い玉石敷きの一本道を駆け上がったクッチは海を見た。

海の色はエメラルドグリーンからコバルトブルーへと美しいグラデーションで彩られる。

初めて見る海。広々と、穏やかに凪いでいた。波はキラキラと光る。美しい光景にクッチは息を呑んだ。と、同時に少し怖いような感じもして、怖気づいた。

街は活気に満ち、ヨーロッパ風のカラフルな木造家屋が立ち並んでいた。見上げた空にはカモメのような鳥が羽を広げてフンワリと風に乗っている。



クッチは、今まで見たことのない景色に感動し、思わず深呼吸、両手を広げてクルリっと回転した。このメルヘンチックな世界感に圧倒されながらも、

どこか懐かしい気持ちになった。真似じゃないけど魔女の宅急便かなー?と思った。ふと、一反木綿無視無視が、

彼女の腹の中で動き出した。クッチは、一反木綿無視無視を取り出し、「パラソルチョコ酔いしなかった?」と笑顔で聞いた。

続く。