クッチは、単価の安い担架の言葉に混乱し、茫然自失となった。真の死に場所とは、一体何なのか?

答えを探すため、クッチはデッドスペースを探索し始めた。診察室の重厚な診察デスクと本棚の間、暗いデッドスペースを覗いてみると、そこには干からびた輪ゴムと変形し錆びたクリップが静かに横たわっていた。

亡骸に手を合わせたクッチは、単価の安い担架の言葉が負け惜しみのハッタリだったと安堵した。しかし、念のために奥へと目を向けた瞬間、壁にへばりついている一枚の薬袋が目に入った。



クッチは手を伸ばし、薬袋を取り出した。破れかけてその使命を終えようとしている薬袋は、それでも最後の力を振り絞って声を発した。

「嗚呼、袋族のお仲間に最期に会えるなんて、私は幸せモノだなぁー。」

その弱々しい声に、クッチは思わず励ましの言葉をかけた。「ダジャレを言わずに死んじゃ駄目!さあ、華麗なダジャレを私に頂戴。」

薬袋は薄く笑って、「良いねーそれが廃屋病院の掟だもの! それでは問題です! いつも死にたがっているお魚は何でしょう!」

クッチは、そのあまりにも陳腐なダジャレに呆れ、ため息をついた。「これが老いぼれるって事か…」

しかし、印籠を渡さないのは卑怯だと感じ、意を決して答えた。「正解は死に鯛ね。お目出度い魚なのに残念だけど。」と

すると、薬袋は静かに目を閉じ、満足そうに微笑んだ。そして、最後の力を振り絞ってつぶやいた。

「…ありがとう、クッチ。これで私も安心して… 旅立てる…益体もない話しに付き合ってくれてありがとう。」

そう言って、薬袋は息絶えた。

クッチは、静かに薬袋を床に置き、デッドスペースを後にした。薬袋の最後の藥袋が益体のない話……の言葉が胸に染みた。

それにしても、真の死に場所は、どこにあるのだろうか? 嗚呼、それは、誰にとっても、それぞれ異なる場所なのだろうと思えた。

その時 クッチは本棚の厚い医学書を見て閃いた!ちっこい族の真の死に場所、それはブックエンドだと。


そしてクッチは廃屋の病院を後にしてバーが待つ家に帰った。