万能ツボの中に飛び込んだクッチ。恐る恐る、ツボの側面に手を伸ばした。ツボの表面は、ひんやりと冷たく、滑らかな感触だった。



指先でツボの表面を撫でると、心が落ち着き、何か不思議な力をもらえるような感覚を覚えた。一呼吸してツボの片隅にうずくまっている額の包帯を見た。

そこには起きてはいるけれどもメソメソ泣いている額の包帯が居た。クッチは明るい声で「額さん、黙って行ってしまってごめんね」と声掛けした。すると額は泣き止んで

「私は額ではなくって、悲嘆です」と悲嘆の包帯は震える声で答えた。クッチの表情に緊張が走り「こんにちは、悲嘆さん、私はカバンのクッチです。

悲嘆の包帯を探していますが、悲嘆さんは、なにかご存知ありませんか?」と言った。

悲嘆の包帯は「私は額の包帯の言動を理解しています。だからあなたが探し物をしているのも知っています。

額の包帯はハチャメチャだから何も知らず、騒いでいるだけですけど。」と返事し、悔しそうな表情を浮かべた。

「そうですか、悲嘆さんは額さんを理解しているのですね。体が一つで心は二つ。さぞやヤキモキすることでしょう」とクッチは言った。

悲嘆の包帯はクッチをキッと睨み「あなたは何もわかっていない! 一つの体に二つの心を持った経験はあるの?  



あなたは自分の欲しいものを手に入れるために同情を装っているのよ!あなたは私に何の権利があってそんなことを言うの!」
もう私に構わないで!」とヒステリックに叫んだ。

続く。