クッチは、薬局に向かう道すがら、
「悲嘆さんから非が取れて、炭酸じゃなくって、単三さんになって電気包帯になってもビリビリして困るわねー。まあ、そんときゃあ、そん時ね」と呟きながら歩いた。


昼なお薄暗い院内の一角に、埃まみれの木製シャッターが下りた薬局があった。クッチは、錆び付いた取っ手をぎいと引っ張り、音を立てながら局内に足を踏み込んだ。

内部も暗く、埃が舞い、薬品の独特な匂いが鼻を刺す。棚には、空になった薬瓶や壊れたピペットや試験管が散乱し、

蜘蛛の巣が至る所に張り巡らされていた。
クッチは、懐中電灯を取り出して足元を照らしながら、重曹を探し始めた。

奥の棚に茶色の小瓶があり、重曹とラベリングされていた。クッチは、瓶を見つけてホッとした。

しかし、その瞬間、背後から物音が聞こえた。クッチが振り返ると、そこには、薬品焼けした冴えないビーカーが待ち構えていた。


そんなビーカー菜は腕組みしてクッチを睨んだ。「黙って入ってきて、薬品を盗み出そうだなんて、大胆な手口だね。薬中で前頭葉がやられてんじゃねーの」と言った。

クッチは慌てふためいて「ごめんなさい!そんなつもりではありませんでした!」と平謝りした。

そんなビーカー菜はフンッとして、「そんなつもりじゃないって…犯人の常套句だろ?」とさらに険しい表情をした。

続く。