ステートは、保護衣から悲嘆の包帯を解放し、手を貸して箱から出した。 悲嘆の包帯は伸びをして、両手両足を広げ、「あーたーらしいしい朝が来たー」と歌いながらラジオ体操を始めた。
クッチは戸惑ってもいられないと思い「こんにちは 私はカバンのクッチです。悲嘆さんに聞きたいことがあるんですけど」と言った。
悲嘆の包帯ははじめましてのクッチを見て体操を止めクッチに向き直った。「わー! 新顔のモノを見るなんて何百年ぶり? お目にかかれて(≧∇≦)bわ!クッチさん」と言ってクッチに抱きついた。
「でもね、残念ながら私は悲嘆の包帯ではなくって、額の包帯よ 額は環行帯で巻き始めを三角に折る以外は
グルグル巻だから楽なのよ ただ 額を切るってあんまり出番は少ないかもねー、それにしたって悲嘆はないわー、
濡れてるっぽいし メソメソしている包帯じゃあ、プロって言えない! 危険、キツイ、汚い、そんなスリルを楽しまなくっちゃ! 血を見てテンション揚げ揚げすんのが包帯よ!」と腰をフリフリ言った。
クッチは戸惑いながらも「嗚呼、名前を間違えてごめんなさい、あなた、悲嘆の包帯さんを知らないかしら?
私、どうしてもお会いしたいの……それにしても、額の包帯さんのように活動的な方が埃まみれじゃ、うつ病みたくもなっちゃうね」と言った。
クッチは明るく振る舞う額の包帯が悲しみを隠して強がっているように思えたし、自分を失っていると思うと哀れに見えて、ステートへと視線を逸らした。
続く。