蝶番が外れた扉を開けたクッチを、薄暗い地下の空間が包み込んだ。カビ臭い空気に、錆びた医療器具の金属臭が混ざり、

奇妙な臭いが鼻腔を刺激する。クッチは懐中電灯の明かりを頼りに、一歩一歩恐る恐る進んでいく。

足元には、散乱したカルテやレセプトが積み重なっていた。かつて患者の悲喜こもごもを巻き起こした紙類は、今では黄ばんで虫食い穴も空いていた。



クッチは不意に足を踏み外し、カルテの山に倒れ込んでしまった。恐怖と衝撃で、クッチはまたしてもシッコをチビった。

しかし、今回は恐怖だけでなく、骨盤底筋の緩みも原因だったかもしれない。クッチは最近、尿漏れに悩まされていた。

「これは恐怖からではなくって、骨盤底筋の緩みかも知れないから骨盤底筋体操でもしないとまずいかもね…」

暗い地下物置に、クッチの独り言だけが虚しく響き渡る。その様子をカルテの影に隠れていた捨てといてステートが見ていた。

彼女は音をさせないようにクッチに近づき、大きい声で「こんにちはー」と言って立ち上がろうとしていたクッチを驚かせ、再び転ばせた。

クッチは盛大に転んでパンツ丸見えで「ギャー」と叫んだ。右耳のもげた捨てといてステートは、



クッチの水玉パンツを見て「ヒッヒッヒー」と指さして笑った。その不気味な笑い声が、暗闇にこだまし、クッチの恐怖をさらに掻き立てた。