鳩との会話に気を緩め、クッチは手術室に向かう途中で床に置かれていた薄緑色のプラスチック製尿瓶に足を取られて転んだ。

尿瓶はひび割れ、入れ墨のように消えることなく底には濃い黄色いシミが広がり、むせ返るような尿臭が漂っていた。


拾い上げてみるとベタベタと指に粘りつき、クッチは顔をしかめ、思わず投げ捨てた。

「痛てて、乱暴だなぁ、先週肝試しに来た中坊たちだってもう少し取り扱いは丁寧だったよ。

見るところ、君はカバンじゃないか!なにをしに来たんだい?主とはぐれたの? 全く、主たちも何を考えているやら、廃屋に来るなんてさ、悪趣味だよ」

クッチは廃屋の病院でも生きているモノはいるなぁと思いつつ「こんにちは、私はカバンのクッチです。

乱暴してごめんなさいね。生きているモノがいるとは思わず、びっくりしちゃって」と謝った。

「うふふ、確かにね、僕は今、肝試しに来る主のことを悪く言ってしまったけれど、驚かすことで主たちのお役に立っていると思うと、

嬉しくってね、体はご覧の通り、壊れてしまったけど、気持ちは蘇った金尿気分なんだよ

それにさあ、廃屋って利用者が案外、多いよね。ナニしたりナニしたりで興奮することもあるし、本当に死体が転がっていることもあって怖いよー

オバケよりも生きている者はおぞろしー」
と尿瓶は笑った。「悪趣味ね、ところで私は悲嘆の包帯を探しているんだけど、知らないかな?」とクッチは尋ねた。



「悲嘆の包帯?聞かないなぁ、でも包帯なら包帯のことを知ってるかも知れないモノを紹介しようか?」

尿瓶の提案にクッチは喜んで頷いた。尿瓶は「でもそれは、問題に正解したらね!ではここで問題です。

尿瓶に流れてくる尿の音はどんな音ですか!」と言った。クッチは目をくるりとして、「簡単よ!」と声を上げた。

次回予告

次回はいよいよ、尿瓶が出題した問題の正解発表です。お楽しみに!回答コメントよろちくBー!