バーは、うつむき、ため息をつき肩をがっくり落として話を終えた。その表情には、深い絶望と後悔の色が浮かんでいた。

クッチは、そっとバーの手を取り、優しく握りしめ、バーの冷たい手に触れるとバーの心の痛みに触れた気がした。



「バー、優子さんのこと本当に心配してたんだね。」

クッチは、真剣な表情でバーの顔を見つめた。バーはその優しい眼差しに触れて心の強張りがほぐれる様な気がした。

クッチは続けて「健太さんとのことで落ち込んでる優子さんの姿を見たら、なんとか力になろうとした気持ちはわかるよ。

だって私たち、主を愛するように出来ているんだもん。誰だって、主が苦境に立たされていたら、精一杯の事をするよ。」

クッチは、バーの気持ちを理解しようと、ゆっくり、丁寧に語りかけた。その言葉は、バーの心に染み渡るようだった。

「木霊晒しの能力を使って幻覚を見せるなんて、思いつきもしない発想だけど、優子さんの幸せを願う気持ちから生まれた行動だって痛いほど分かる。」

バーの行動をポジティブシンキングーし、その事に拍手をしているクッチの言葉は、明るく、前向きな響きを持っていた。


「でも、結局優子さんを現実から逃避させてしまっただけかもしれないね。それでもバーは出来る限りのことをしたんだと思うよ。

もし幻覚を見なかったら優子さんの心はもっと、追い込まれて取り返しのつかない事態になってたかも知れない。

バーの木霊晒しの能力が失われてしまったのは辛いだろうけど、それはバーのせいじゃない。むしろ、優子さんの苦しみを少しでも和らげたバーは立派だよ。

今は落ち込んでいるかもしれないけど、優子さんだって元気にしているハズ。だって幻視なんてその時だけの気の迷いだもん。

あのね、バーどんなことがあっても、私はずっとバーの味方。何か力になれることがあれば、遠慮なく言って。」クッチは照れたように笑った。