薄暗い部屋に漂う埃の鄙びた匂いと、ヒンヤリとした床から香る微かなワックス。クッチはその懐かしい空気を吸い込み、しみじみと帰ってきたことを実感した。

心配していたバーは、腰を折ったままながらもソファに腰掛けていた。シワの数が増えたようだったけれども、元気そうでホッとすると同時に、涙が溢れた。

バーはクッチの姿を見るなり顔の皺が一瞬ピンッと伸びたが、笑顔でまたしわくちゃの顔に戻り、両手を広げてクッチを抱きしめた。

しかし、次の瞬間、バーの表情は曇った。クッチからは鼻を刺すような悪臭がした。

バーは慌てて盥に水を張り、クッチの抵抗も虚しく洗濯板でゴシゴシ洗い始めたクッチはバーの為すがままになった。

洗い終わった後はパンパンとシワを伸ばされ、たっぷりのお日様に干された。クッチは物干し竿に吊られて風を受け、ウトウトしていると、


自分からラベンダー&フラワーガーデンの香りが漂い「帰ってきたんだ」と実感することが出来た。

すっかりキレイになったクッチと喜びが隠せないバーは、夕日が差し込む縁側に腰掛け、

改めて久しぶりの再会を喜んだ。クッチは夢の島での冒険を生き生きと語り、バーは目を輝かせながら聞き入った。

ひとしきり夢の島の話をして、やっとクッチはチューブの涙の結晶を思い出し内ポケットから取り出した。

けれども結晶から輝きは失せ、それは弾力を失った緑色のスーパーボールのようになっていた。


続く