フックは続けて「ところで、お嬢さん、お名前は?」と声をかけた。クッチは眼下の夢の島を見つめつつ「助けてくれて、ありがとうございます。私はカバンのクッチと言います。」と答えた。

フックはニッと笑って「クッチさん、野暮なことはコンプラに関わるのでお聞きしませんが、何処に行こうとしています?」と飄々尋ねた。

クッチはフックは大手運送会社で働いているようだけれど、自分も同じ運送業だったなぁ、

会社になんの連絡もせず、すでに自分の帰える場所ではないのかもっと、現実的な事を思い出した。



「はい、私は夢の島の冒険を終えて、小間物町へ帰るところなんです。でも、帰り方が分からない」とクッチは言って、しょんぼりんこ。

フックは優しく笑って「私たち辛ゾンのドローンはこの辺りを巡回しています。クッチさんはもうすぐ冒険を終えますよ

もう5分もしたら逆風に煽られますから、その風に乗って飛んでお行きなさい。そこはたぶん、小間物町でしょう。

運悪くそこに降りられなくっともそれほどトンチンカンな場所に行く事はないから安心して。

オット、クッチさんともっとお話したかったですけれど、風ですよ、さあ、乗ってお行きなさい。」

フックがそう言うか言わぬ間にクッチの体は風に煽られフックから抜けて空にフワリと浮いた。

クッチは「ありがとう!サヨウナラ!」とフックに手を振り、夢の島の方角を名残惜しく振り返った。



風は徐々に強くなり、一瞬クッチは高く高く舞い上がった。そして、小間物町が近づくと、地表風が不規則に吹き上げてきた。

クッチはバランスを崩しつつも、なんとか小間物町を目指して落下していく。そして、無事にバーの住む小さな家の前に着地した。

「ただいま、バー!」

クッチは声を張り上げながら、家の中へ飛び込んだ。

続く。