涙の結晶はクッチをしっかりと包み込み、竜巻の猛威から守ろうとした。竜巻はクッチを空高く舞い上げ、そして地面へと叩きつけようとする。

しかし、涙の結晶は奇跡を起こした。涙の結晶から放たれた光がクッチを包み込み、クッチはゆっくりと竜巻から抜け出した。

クッチは地面から数メートル上空で、静かに漂っていた。クッチは涙声で「助けてくれて、ありがとう。」と言うのが精一杯だった。

涙の結晶は優しく微笑むように淡い光を放って「いいのよ、クッチ。私がここにいるのは、あなたを助けるためなのだから。それにしても今日は殊勝な態度だ事」と鼻で笑った。


クッチは涙の結晶を両手でしっかりと包み、再び空を見上げた。遠くの空に、小さな光点が見えた。

光は徐々に大きくなり、クッチはそれが辛いゾンの配達用中型ドローンであることに気づいた。

ドローンはクッチの真上に来ていた。クッチは配送用のフックがあるのを見て自分の腕を思いっきり伸ばした。

フックはカバンを見れば声をかけなくてはいられない定め。ましてやクッチはホコリまみれではあったけれど、まだ若い、ハツラツとしたカバン。


フックも思わず、鼻の下を伸ばしクッチの腕を引っ掛けた。クッチは大きなタメ息を「フッー」と吐いて「フックさん、鼻の下を伸ばしてくれてありがとうございます」と言った。

フックはデレデレして「辛いゾンは甘いゾンとは違って厳しいから、これは秘密にしてね」と答えた。

続く。