クッチは続けて「憑依って割とラクラク憑いちゃう感じね、もう少し重々しくしないと嘘くさいわよ」

お守りはちッちッと人差し指を振って「クッチさん、分かってませんねーどんだけー 学習能力の欠如。

成仏できないモノには、ちゃんと言い分があります。でも、その想いを上手く伝えられなくて、途方に暮れてるんです。  

だから、憑依は簡単。言いたい事がたくさんあるんですから。最後は彼らの心の奥底に溜め込んだ想いを、受け止めてあげられれば、あとはもう騒ぎを起こしたりなんてしませんよ。」と言って意識を集中し

「ドラメシヤとサマヨール魂ドロンチといざいでよー」お守りを見ていたクッチはクールに「知ってる単語をつなぎ合わせて即席の呪文って意味ないじゃーん」と言った。



お守りがぱったりその場に倒れ込むと、入れ替わりにファイルが現れた。「主、主は何処です?私はここにいます。

主になんのご挨拶もせず、出ていった私を怒っていますか?ごめんなさい。もう、二度と勝手な事はしません。

どうか、どうか、私をお蕎麦に置いて下さい。嗚呼、許して下さい。姿を見せて」彼はそう言ってさめざめと泣いた。

クッチはその背をなでながら「ファイルさん、泣かないで。主は一度捨てた物のことを、捨てた消耗品を思い出したり、探そうとすることはないのよ。

辛いけれど、悲しいけれど、悔しいけれど、それがモノと主の関係、泣いても怒っても変えられない定めがあるの」

するとファイルは顔を上げて「私は捨てられていません。主はそこら辺の薄っぺらい者たちとは違うんです」ときっぱり言った。