「クッチ、心配しないで。私はあなたに意地悪するつもりはないわ。カバンのクッチが話せる世界なんだから、結晶だって話すって。」

その声は呆れたと言った感じだった。クッチは、(・д・)チッと思って「あなたは誰なの?」と尋ねた。

結晶はうんざりした様子で「私はジーソの涙の結晶じゃない?彼の熱い心が自身のポリエチレン成分を溶かした時に、閉じ込められた彼の喜びの涙よ。

ポリエチレンは「高温に弱いこと」が短所。それ以上の事は分からない。ねぇ、逆に自分が誰かなんて分かってるモノ居る?全て分かってたら生きるのなんてウンザリかもね」と笑った。



「あなたは変身できるの?今、漬実を見たのはわたしのマボロシ?帰りたい、その思い込みや願望がわたしの現実を歪めているの? わたし、怖い」クッチは真剣な表情で聞いた。

「あなた!いくつなの?モノは自分の見聞きしたいモノを見たり聞いたりするのよ、じゃなけりゃあ、理不尽なこの世界で3分だって生きていられない。

この木霊晒しのチカラがなかったらモノの生涯は辛すぎる。モノはさ、玉です玉です、カバンです、カバンですって自己主張し続けなければ即、ゴミ化するのよ。



あなた、これまでその苦しみも知らず、ボンヤリ生きてきたのね」と済まし顔で言った。

クッチは自分だってと思ったけれど唇を噛んでその言葉を飲み込んだ。クッチは結晶の存在を認めざる得なかったが他のモノに言うのははばかられた。

続く。