クッチは、お守りを真似て結晶を太陽にかざして光に透かした。すると、結晶の中に映し出されたのは、冷蔵庫のポケットで一人孤独に佇む漬実の姿だった。
漬実は、入れ替わり立ち替わり食卓に並ぶチューブたちが、今日の活躍話をするのを微笑んで聞いていた。しかし、一人になった瞬間、使われずに忘れられた自分自身を憐れみ、涙を流した。
次に映ったのは、ジーソ。彼は箸でしごかれ、中身を絞り出されていた。それはモノとして光栄な瞬間ではあったが、あわやキッチンハサミで、胴体を真っ二つにされてしまうところだった。
そして、二人は夢の島、ドリームランドで出会った。HOUSEとS&Bと言う永遠のライバル種族ではあったけれど、二人の心には、笑顔あふれる食卓の景色が浮かび、その心象風景こそが二人を結びつけていた。
結晶に映し出された二人の記憶は、美しくもあったがセピア色を帯ていた。クッチは涙を拭い、改めて結晶を両手に包み込んだ。
列席者たちは、結晶から漂う芳香に酔い、ふらつきながら会場を後にした。
クッチは、漬実とジーソの元へ駆け寄り
「漬実さん、ジーソさん、結婚おめでとうございます。二人のお幸せな姿を目の当たりにして、私もとても幸せな気持ちになりました。
そして、この愛の結晶、本当にありがとうございます。」と言って結晶を漬実に返した。
漬実は、ジーソを見つめ、そしてクッチに「クッチさん、これはあなたが探しているチューブの涙の結晶ではないかもしれないけれど、どうか受け取ってください。
私たちはクッチさんに出会わなければ、こんなにも素敵な一日を迎えられなかった。だから、これが愛の結晶であるなら、次はあなたの番です。どうか、持っていてください。」と言って、結晶をクッチの手に握らせ、その手を優しく自分の手で包み込んだ。
その瞬間、結晶は温かい光を放ち、新たな旅立ちを予感させるような輝きを放った。
クッチは、漬実の手の温もりを感じながら、いつか、自分も自分の愛の結晶を見つけ、幸せな家庭を築きそして、その結晶を、誰かに受け継いでもらいたいと思った。
続く。