クッチがぼんやりとしていると、お守り、漬実、ジーソは歯ブラシを抱え、出かけようとしていた。
「クッチさん、火葬に行きましょうよ!」漬実の言葉に、クッチは目を丸くした。
「えっ、なんで?歯ブラシさんはお守りさんによって成仏できたじゃない。」
「どんな事だってケジメは大切ですよ。」
先ほどまで火葬に反対していたはずのお守りが、さも当然のように言う。
「でも、歯ブラシのままだったら活躍の場もあるんでしょ?」クッチは抵抗を試みるが、ジーソが歯ブラシを掲げて言った。
「ブラシ部分は隙間掃除に精を出しすぎてすり減り、今はただのプラスチックの棒です」
「ヒョエー」とクッチは驚いて、これまでの話しは何なんだ!と思った。お守り、漬実、ジーソは「クッチさんったら、とんだけちん坊?」と言って笑いあった。
呆然としたクッチだったけれど「漬実さん!火葬にするなら燃料?どうするの」と聞いた。
ジーソが自信満々に答えた。「ここは収れん火災を起こせるモノもたくさんいますよ。ミラーさん、ガラス玉さん、吸盤さん、ホイールさん、置き時計さん、照明器具さん…枚挙にいとまがありません」
漬実は使い捨てライターを掲げ、「まだガスが入っているのに捨てられてるのよ!」と嬉しそうに言った。
そしてお守りが笑みを浮かべ、「この近くにメタンガスの吹き出ている谷があるので、そこに行けば歯ブラシさんは、まぁーよーくとろけますよ」と笑った。