「無理なんてしてないよ。もし、ここに来て漬実に会う楽しみがなかったら、僕は動く原動力も失せて、とっくにゴミになって死んでいたさ。僕は使い切られたチューブ族だもの。」

クッチは静かにジーソの言葉に耳を傾けた。

「精一杯生きられて、その上に漬実と会えた僕は幸せモノだよ。それに、ここから僕らの西の住まいまでは、

足幅3.5センチの僕が体をグイッとひねって25歩で着く距離だからね。そのくらいは歩かないと体がなまるよ」

クッチは「あの、なんで歩幅で距離を測ったの?」と聞いた。

ジーソは照れたように「僕らってさ、旅のお供にされたりしないから、冷蔵庫と台所、せいぜいが食卓へ行くくらいだろ?



憧れたんだな、ふりかけさんとかボストン・バッグさんとか、あー、クッチさんも一泊旅行対応型でしょう?良いなー、色々なところにお出かけしたのでしょうね」と言った。

クッチは頭をかいて「エヘへ、私はビジネス専門だけど、今は自由の身なんだ。自由になってから初めて単独旅行したけど、それは置いておいて、ジーソさんの夢は旅行なの?」

「僕は今、戻ってきたモノのない旅に出る寸前だから、旅立つここ、ドリームランドの悲惨な状態を変えられたらなぁ、なんて思うけど、思うだけだね」

クッチは「ヨッシャー!」と思い、「ジーソさん、昨日の夜、漬実さんと話していたんだけど、私たちの手の届く場所で亡くなっているモノたちを成仏させるのはどう?」

それを聞いていた漬実は「ダメだよ!ジーソは肉体労働の出来る状態じゃあないのに!クッチさんは自分の事ばっかりで、ジーソの事なんかどうでもいいんだよ!」と、まくし立てた。

続く。