クッチは、腐ったタライの縁に近づくと、思わず鼻をつまんだ。鼻腔を刺激するヌメヌメした悪臭は、まるで腐敗した魚介類と酸っぱいカビが混ざったような、強烈な刺激臭だった。
タライの表面は、緑色のカビで覆われ、ところどころ穴が開いていた。底には、泥水が溜まり、泡立っていた。
そこでは、野ざらしにされたモノたちがぼんやりと座り込んでいたり、亡くなったチューブをソファ代わりにしている姿もあった。
クッチは疲れて、傍らにあるクリーム色のソファのようなモノに倒れ込んだ。漬実は、「クッチさん、座り心地はどうですか?」と聞いた。
クッチは、「ツルツルしていてイマイチだけど、体が沈み込まなくて良いわ!」と答えた。
漬実は、クッチを見下ろして、「クッチさん、それは亡くなったマヨヨさんですよ」と言った。
クッチはビョンと立ち上がり、「えっ!一斉を風靡したチューブ界のカリスマ、マヨヨさんが中身が一杯でも捨てられる!」と驚いた。
漬実は、悲しそうな顔で、「マヨヨさんは大変な人気モノでしたが、風評被害に遭って、使われている途中でも捨てられてしまったんです。
マヨヨさんは、主たちがマヨヨさんのせいでコレステロール値が上がって、下げようとしてサプリメントを飲んだら入院する羽目になったというデマが拡散され人気は急転直下しました。お労しい事です」と
クッチは、マヨヨの無残な姿を見て、怒りに震えた。マヨヨの体は、泥水で汚れ、ところどころ穴が開いていた。
「そんなのマヨヨさんのせいじゃないじゃない!目茶苦茶にマヨヨさんを欲しがったらどうなるかは分かるはずだわ!マヨヨさんは弄ばれて殺されたのよ!」と叫んだ。
クッチは、マヨヨの無残な姿を見て、怒りと悲しみでいっぱいになった。マヨヨは、何も悪いことをしていないのに、主たちの無知とエゴによって命を奪われた。
漬実は人差し指を唇に当てて「シッ、クッチさん、それ以上は言いすぎです。私たちはモノですよ」と心配な表情をした。
クッチは唇を噛み締めた。
続く。