㉛クッチは激しくバウンドし、吐き気を催しながら目を覚ました。視界がぼやける中、自分が柔らかい感触のものの上に横たわっていることに気づいた。
ようやく視界がクリアになると、その「柔らかい感触」が正体不明の白い蛆虫であることに気づき、クッチは絶叫。
芋虫ほどの大きさの蛆虫は、ヌルヌルと蠢きながらクッチの足元を這い回り、彼女の靴の中にまで入り込もうとしていた。
蛆虫の不快な感触に、クッチは全身が震え、声も出ない。恐怖で体が硬直していると、どこからともなく
大量の蝿が飛んできて、カバンのクッチの口、鼻、耳、あらゆる穴に群がり始めた。蝿は彼女の空腹の空っぽの腹にまで入り込み、内側から食い破ろうとしていた。
蝿の羽音、蠢く巨大な蛆、そしてクッチの絶叫だけが響き渡る悪夢のような空間。クッチは正気と狂気の狭間で、絶望の淵へと落ちていく。
クッチが次に目を覚ましたのは、生暖かい薄暗い空間だった。鼻腔を刺すような腐敗臭と、耳元で響く不快な羽音。クッチは蛆虫とハエに囲まれていることに気づき、思わず顔をしかめた。
周囲を見渡すと、ここは扉の壊れた冷蔵庫の中だと分かった。庫内のプラスチックは劣化し、破損していた。断熱材のウレタンは飛び出し、コンプレッサーは錆色に変わっていた。
クッチは薄暗い野菜室に寝かされていた。割れた戸から差し込むわずかな光が、ゴミで埋め尽くされたドリームランドの荒涼とした景色を照らし出す。
野菜室の片隅には、別の空間がひっそりと存在していた。そこには粗末なミニチュアの木製テーブルが置かれ、その上に、赤いモミの木が描かれたカップケーキの型紙が敷かれていた。
その上には、向日葵のプラスチックピックが飾られ、ささやかな幸福を演出しているようだった。