㉗「クッチ、クッチ、無事で良かった!
クッチの声が聞けて嬉しいよ。
その上、アブナイトまで手に入れてくれるなんて、
派手好きなグッチには絶対にできない、
クッチだからこそ成し遂げられた偉業だよ。
あなたの質実剛健な人柄が、奇跡を起こしたんだ!」
バーの温かい言葉を聞き、クッチはこれまで抱えていた不安や悩みが一気に吹き飛ぶのを感じた。自律神経失調症の症状も、いつの間にか消えていた。「バー、私、病気が良くなってきた!冒険だよ!私の生活に足りなかったのは冒険だった………あっ、違った………セットプランの観光旅行だね」と言って舌を出した。
バーはクッチの手をポンポンと叩いて、「慌てなーい、慌てなーい、病気なんてさ、良くなったり悪くなったり波があるんだよ。良くなったばかりでフルスイングしちゃダメ、なーに、バーなら大丈夫!クッチの顔を見たら元気が出て来たよ。しばらくバーの話し相手をするつもりで休んで」クッチはたった3日間の間に痩せたように見えるバーの為に早く、無論アルサーの材料を見つけなくてはと焦った。
「バー、分かったから、次の材料はなに?何処にあるの?教えて!」と少しカッとして言ってしまった。
バーは内心、仕方ないなと思いながらもクッチの喜ぶ顔が見たさに「次に集めやすいのは、そうね、チューブの涙の結晶よ。それは、ドリームランドにあるの。
でもクッチ、あなたも聞いたことがあるでしょう?あそこはモノたちの墓場ゴミの島だから、生きて戻れる保証はないのよ。クッチ、気を付けて!ドリームランドにある悲しみ、憎しみ、恨みや怒りはあなたを飲み込もうとするかも知れない。
どんな事が起こっても流されないで、怒らず立ち止まって、敵の多くは自分の内にあるかもしれないわ」とバーは言ったけれど、怒ってつむじ風のように出て行ってしまったクッチにその言葉が届いているのかと、バーは不安になった。
バーは自分の弱さで、クッチを引き留められなかった事を後悔しつつ、枕元の猫缶に眠る仲間たちに「お願い、クッチに力を貸して」と祈った。