⑥クッチは発音が、婆ーとならないよう 細心の注意をはらいながら「ところで、バー⤴さんはなぜ、ごみ拾いを始めたのですか」と聞いた。
「私は婆さんだけど爺さんで、つまり、年寄りだからお迎えが近いのよ」と、バーはアッケラカンと言った。クッチはまたまた驚かされ、かける言葉は見つからなかった。
バーは静かに続けた。「つい先日、この公園のベンチで主人が食後シーハーした後に、私の腰辺りを折ったの。その瞬間、私ももうすぐあの世へ旅立つんだと悟った。
そうしたら主は手を滑らせて私を地面に落としたのよ、まぁ、拾って戻される事もあるのだろうけれど、
私たち爪楊枝族は小さいから探すのも一苦労で、地面に落ちたらそれっきり縁は切れるわね。
で、地面に落ちたなら夢の島で燃やされて死ぬのじゃなくって、土に還るのは、悪くないなって考えて、周りを見回したら、仲間たちがいっぱい、野垂れ死にしてた。
悲しくなっちゃってね、ひとしきり泣いたのよ。そうしていたら思い出した!爪楊枝族は小さいから再生されないのが普通だけど、
北の大地北海痒い痒い道では分別されていれば資源ごみになれるって、テレビでやってたの。だから私ね、
亡くなっている仲間を拾い集めて一箇所にまとまったら、どこぞのこころ優しい主に拾われて、
北に連れて行ってもらって再生できるって思ったの。でも、もう、状態で言えば既に死に体だから無理かなー、でも再生されたいなーって思ってたらチカラが湧いてきて、
立ってみようと足を踏ん張ったら立てたの。まぁ、長くはないと感じているからこの世はオシマイだけど、再生の夢があるから不幸じゃない」と話しを終えた。
続く。