③爪楊枝婆ーは「あなた、もし暇なら私が掃除している他の公園にも付き合ってくださる?
他のモノとゴミを拾うのも、気分転換になるわ。春の陽射しを浴びながら、公園の景色を楽しむのも良いでしょう?」と誘ってくれた。
クッチは爪楊枝婆ーの気遣いに心打たれ、「ハイ、わたしでお役に立てるなら、喜んで!」と答えて、二人は次の公園に向かって歩き始めた。
すぐにゴミ袋はいっぱいになり「毎日、これだけのゴミが出ているんですか?それをお一人でキレイにしているなんて!役所に連絡しましょうか!」とクッチは憤った。
爪楊枝婆ーは、いたずらっ子のような笑顔で言った。「あら、ゴミ拾いなんて、私のお楽しみなのよ。
それに、時々百円玉も拾えるの!でも、それはここだけの秘密ね」と、指で口元に人差し指を立てて、クッチにウィンクをした。
クッチは、爪楊枝婆ーの言葉にハッとさせられた。自分なら、ゴミ拾いをしても、それは自己アピールのためだっただろう。
人の目を気にせず、自分のために何かをするなんて、考えたこともなかった。今まで、周りの評価ばかり気にして行動してきた。
「本当に自分のため」だったのだろうか?
もっと自由に、もっと自分自身の声に耳を傾けて生きていたら、病気にならなかったのでは?と考えた。
爪楊枝婆ーの言葉は、クッチの心に小さな波を立てた。それは、自分自身を見つめ直し、本当に大切なものを見つけるための波。
続けて爪楊枝婆ーは「私は婆ーといいますけれど、あなたのお名前はなんとおっしゃるの?」と聞きました。
クッチは、目の前に立っている老婆を見て、目を丸くした。老婆は、真っ白な髪を後ろで束ね、ニコニコと笑顔を浮かべていた。
「えっ、婆ーさん?!」
クッチは思わず声を上げてしまった。
婆ーは、クッチの言葉に驚きもせず、「そうなのよ、婆ーさんが婆ーさんなの。
でもね、実は私ハーフなの。だから婆ーさんじゃないのよ、バーなの」と言った。
クッチは、老婆の意外な言葉に、さらにたまげつつも、ゴミ袋をおろして、
「私はクッチと申します」と丁寧な挨拶をし、頭をペコリと下げ、老婆への敬意を表した。
続く。