彼は、縁にレースがあしらわれた白い花柄のハンカチを見つけた。レースのハンカチは母の愛用品。彼は、母の喜ぶ顔を思い浮かべながら、ハンカチを手に取った。

けれど値段を聞いて彼は思わず息を呑む。

「5万円ですか?」

彼にとって5万円は途方もない金額だった。一週間寝ずに働いても、そうそう簡単に手に入れることのできない金額だ。
樹脂王の王様気分は吹き飛び、自分が場違いなところに来ていることを悟った。彼は恥ずかしい気持ちに駆られ、一刻も早くこの店から逃げ出したくなった。

それでも、店員は微笑んで彼のYESの答えを待っている気がした。もう、あとには退けない気持ちになって、後先も考えず、


品物を包んでもらうよう笑顔で頼んだ。あたふたと会計を済ませると、彼は頭がくらくらした。

続く。