うわッ!すごい傑作だよ、映画化も間近じゃないかな?そしたら主は8歳にして作家先生になるね!僕はどんどんお手伝いするさ。
あっ、本物の先生が来たみたい。先ずは先生がどんだけ褒めてくれるんだろう!そう言ってペン先は机の物入れに隠れた。
ペン太は、ガラガラと引き戸が開く音で目覚め、白紙と思っていた原稿用紙に目を落とすと、そこにはびっしりと自分の字で書かれた四枚の原稿用紙があった。
ペン太は呆然と原稿用紙を見ていた。そこに教師がやって来て、「ペン太、どうだい、書けたかい?見せてごらん?」そう言って、教師はペン太の手から原稿用紙を受け取った。
一読した教師は誤字脱字ばかりとはいえ、ペン太が、原稿用紙を4枚、書いたのだと思うと感心した。
しかし、その内容は課題とは違っていて、荒唐無稽。ペン太は、スマホゲームのやりすぎではないかと思い、心配な気持ちもした。
ペン太はやっと我に返って、先生!原稿用紙が、勝手に作文を書いたんです。僕は書いてない…と言った。
先生はペン太が恥ずかしさを隠すための嘘だと思い、「ペン太、原稿用紙4枚なんて、大人だって書けやしないぞ、内容は課題から外れて誤字も多いけどな、頑張ったな。
と褒めた。
ペン太は無言で首を振る。
教師はああ、ペン太はスマホを持って来ていていてどこかから、文章を写したのだろうと考えた。
それでも原稿用紙4枚のマス目を埋めたのだから叱っては可哀想と思い、スマホ、便利だな、そのうち、作文も書いてくれるかもしれないなぁと、笑って、教室を出て行った。
ペン太は勢いよく椅子から立ち上がると、
気持ち悪い!と一言言って、原稿用紙を破り捨てた。
これを机の物入れの片隅で見ていたペン先は期待していたことと真逆の状況に遭遇し、全身を震わせた。