ヘソクリス大大大吉の御神籤を引く!
大大大吉? まあ、当然だな
おみくじ? ああ、あの原始的なデータ解析の結果か。
フッ、何を今さらだ。俺は日々、我が神殿たる肉体をストイックに鍛え上げ、無駄を削ぎ落としている。あの毒親からのパワハラにも耐え、仕事では日々切磋琢磨している。その結果が、こんな紙切れ一枚に現れるのは、ある意味、必然だろう。
俺の辞書に し籤りはないのさ。今日は、苦しくないか? 付いて来れてるか?
八十九
猪野は不満そうに口を尖らせた。「拙いって……。ヘソクリスさんが勝手に盛り上がって、勝手に諦めただけじゃないですか!」
「まあまあ、そう興奮しないの」ヘソクリスは苦笑いしながら猪野の肩をポンと叩いた。「俺は常に最適な道を選ぶ主義でね。今回の件は、どう考えても時間と労力の無駄だと判断したわけだ」
「無駄って……」猪野はまだ納得がいかない様子だ。「でも、ラリパッパ族との友情は?」
「友情は友情、現実は現実さ」ヘソクリスは涼しい顔で答えた。「彼らの生き方を尊重すると言っただろう?
俺たちが彼らの問題に深入りするのは、彼らの自立を妨げることにもなりかねない。それに、ノロイン女王が2200年前の恨みを引きずっているのなら、我々が行ってもろくなことにならないのは目に見えている」
猪野は反論の言葉を見つけられず、ただ呆然と洞窟を見上げた。ラリパッパ族が戻っていった洞窟の入り口は、まるで彼らの過去の因縁を象徴するかのように、暗く深く口を開いている。
猪野は懐から、オカメインコ型用心棒の羽と、ラリパッパ族の干からびた青汁粉――おそらく元・族――を取り出して、「これを見た会社はそれだけで喜ぶと思います!」とニンマリした。
「あゝ、良かった。君が会社に白眼視されると俺も動きづらいから」と、ヘソクリスは変化球を投げた。
「フッフッ、素直じゃないなヘソクリスさん。あなたが優しい人だって、バレてますよ」と、猪野は笑った。
こうして二人は、無事に山を下りた。
