バイトの仕事は3人一組で動く。エビちゃんが運転し、私と俣さんがあっちこっちの事務所の片づけをする。働き方改革のお陰か、そう言う誰がすんの?的グレーゾーンの仕事を外注しないとならないところが多いらしい。でも、社長が寸借詐欺で裁判中の人だから、もしかして仕事先もまともなところじゃないのかもしれない。エビちゃん、俣さんと親しげだけれど、エビちゃんが30歳前後で俣さんが60代後半くらいかも、しか知らない。わが町に引っ越してきて7年になるも、団地の住人にも知り合った人々にも仕事についてとか、過去とかを聞かれたことがない。それがこの町の流儀。ハードボイルドな雰囲気だけど「聞いてもろくな話じゃない」がお互い様の事実なんだろう。

昼休憩も3人セットで車中で食べる。今日は現場がOK近くだったので3人とも199円ののっけ鮭弁当(イカフライ)だ。「このフライと竹輪の揚げたのが後からきちゃうんだよね」と言うとエビちゃんがのんきに「旨いですよね~、安いし、ホント、助かります」と答える。狭い車内に安い油と汗と体臭とゴミの臭いがしてすぐにも飛び出したい状況だ。にもかかわらず、常に能天気な若者と常に挨拶さえ拒否る老人は全然気が付かない。「もう、こんな生活、嫌なんだよ。金欲しいな」とため息交じりに言うと、また、ほのぼの青年が、「金なんかそんなに欲しいって思ったことないっす。飯に困ったこともないし、金よりはなんか、賞とか欲しいな。で、若い子にモテたりして」と、さらに笑顔の押し売りをするのでますます腹が立つ。ぜってい、こいつ、ゆとりだよ、円周率もまともに教えられてない奴だよと確信しました。「あんたねえ、今どきの女子はコスパがすべてなんだから、金なのよ、金」と言いました。エビちゃんは「え~っ」と言い、口をとがらせました。しばしの間があり、「金ある所に名誉あり、名誉ある所に金は集まるのです」と、俣さんがぽつり。「うわっ、俣さん、今日初めて話してません?」と、エビちゃんは驚きつつも、私に目配せし、「この爺は何者でしょうか?」と言ったのでした。俣さんはまた、何を聞いても口を開きませんでした。俣さんの正体をご存じの方、ご一報ください。よろしくお願いします。長くて御免なさい。分割も試みたのですが、盛り上がらなかったのでこんな結果になりました。引き続きお付き合いくださいね。