高木美帆が金メダルを獲得した。
高木美帆は幕別町出身。
幕別町は実家のある帯広の隣町。
帯広でも大騒ぎらしい。
しかし、私が北京五輪で一番、印象深かったのは高木美帆の姉、転倒した高木菜那の姿である。
私はテレビを滅多に見ないのだが、たまたまテレビをつけたら高木菜那が号泣していた。
決勝で敗れた事は直ぐに分かったのだが、他の選手が慰めていたので高木菜那のせいで敗れたのだと悟った。
どうも最終コーナーで転倒したらしい。
私は心を締め付けられた。
高木菜那は日本スケート界が生んだ日本最大の天才スケーター高木美帆の姉なのだ。
天才イチローや松井秀喜の兄と同じような境遇である。
しかし、天才の妹と同じ競技であるスケートを続けた。
私は高木美帆が紹介されたテレビ番組で記者が横にいた高木菜那を「妹さん?」と聞いた事を鮮明に覚えている。
高木美帆が「妹だって」と言った時の高木菜那の笑ったような、泣いたような顔を忘れない。
そんな高木菜那は金メダリストになった。
どれだけ努力して来たのだろうか。
高木菜那が所属していた日本電産のオーナー永守重信は、私以上の、日本一の負けず嫌いだと彼女を評した。
金メダリストの清水宏保は高木菜那の転倒はブレードがリンクの溝に嵌まったからだと断言した。
羽生結弦がリンクの溝に嵌まったからだと弁明したのとは違い、高木菜那は一切、弁明しなかった。
何とも潔いではないか。
不可解な判定、ドーピング。
五輪の在り方が問われる北京五輪だが、泣き崩れた高木菜那の姿を見て、やはり五輪は良いなと思った。
己の敗北を潔く認め、勝者を讃える敗者は勝者よりも美しく、見ている者の心を激しく揺さぶるのである。