最近はカツ丼がキツくなって来たので、親子丼を食べる事が多くなって来た。


味の染みた鶏肉を摘みながら酒を飲むのは悪くないものである。
親子丼はカツ丼よりも酒と一緒にやるには良いのかもしれない。

カツ丼と一緒にやるならビールだろう。

さらに年をとったら玉子丼になるのだろうか。
気になったので玉子丼の歴史を調べてみたのだが、資料は見つからなかった。
親子丼よりも古いとは思えない。

永井荷風によると都内の蕎麦屋で丼物出されるようになったのは関東大震災以降だという。
その時に木の葉丼や衣笠丼などと一緒に関東に入った可能性も否定出来ない。

しかし私は、どうも蕎麦屋の客が天抜きのように親子丼の鶏抜きと注文したのではないのかと推測する。

因みに天抜きとは天麩羅蕎麦の蕎麦抜きの事である。
汁が染みた天麩羅は最高の酒の肴。
かけ汁もお吸い物代わりになる。
この天抜きなるものは江戸っ子のおっちょこちょいが始めたのではないかと推測する。
それを粋だと思った人達が真似て広がったのだと思うのだが、どうだろうか。

玉子丼も懐の寂しい客が、蕎麦屋の主人に「親子丼の鶏抜きくんな」と言ってみて始まったような気がする。

洒落の分かる主人が出して来たのが玉子丼。
どうもこれが正解なような気がする。
そうなると玉子丼の発祥は関東という事になる。
旨い出汁と堅く炊いたご飯があれば、親子丼に負けない玉子丼が作れる。
丼物の中で一番安い玉子丼。

原価が安いので蕎麦屋のメニューに残り続けているのだろう。
玉子かけご飯が人気なので、案外、旨い玉子丼に人気が出るかもしれない。
しかし私は食堂で一度も玉子丼を注文した事がない。

何故なら具がないので酒の肴にならないからである。