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安置所の中は季節が真逆になってしまったかのように冷え切っている…

安置所も霊安室もそこに『哀しみ』を纏っているぶん空気まで凍てついてしまい、
よりいっそう体感温度が低く感じるのかもしれない…

お線香の煙がまとわりつくように私を包み込み、
髪にその匂いが染みついてしまうぐらい長い時間をダンナとふたりきりで過ごした。

ひとしきり泣いたけど、
泣いても泣いても次から次へと涙が溢れ出てきて涙腺は一向に涙の生産をやめる気配がない。


「なんでこんなに哀しいんだろう?…
生きてるときは一緒に居るのが苦痛でたまらなかったのに…
パパがもうこの世にいないって考えただけで哀しくて哀しくて仕方ないよ…」


人間なんて勝手なものだ。
ううん…
私が勝手なだけなのかもしれない…

逃げれば追いたくなる心理と一緒で、
いま目の前にないものや手に入らなくなったものばかりに思いを馳せてしまう…


私はやっぱりダンナに死んで欲しくなかった…

生きてて欲しかった…

生き続けて欲しかった…


生きていたらダンナのことを許せたか?なんて、
そんなこと今はどうでもいいぐらい、
とにかく私はダンナに生きていて欲しかった…

ダンナを喪ったからこそ気づくことが出来たこの想い…

今もダンナが生きていたらそんな想いに気づくこともなく、
惰性だけの変わらない日々をやり過ごしていただろう。

ただ…

生きていて欲しかったという思いのなかにも色々な思いが混在する。

純粋にそう思う気持ちが半分…

あとの半分は経済的な支柱を失いたくなかったという思い…

ダンナを喪ってしまったということは、
今後の暮らしに大きな不安を背負うことが確定してしまったということだ。

今まで夫婦で働いてやっと生活が成り立っていたのに、
これからは私ひとりの稼ぎになってしまう…

その現実が不安で不安でたまらなくなる…


「パパ…この先…私やっていけるかな?」


ダンナはこの安置所の天井から私のことを見ているのだろうか?

きっとまだ自分が死んでしまったことに気づかずに私に向かって大声で叫んでるかもしれない。


『おーい!俺はここにいるぞー!無視すんなよー!』


そんな声が今にも聞こえてきそうだ…


コンコン…


ノックの音と共に小林さんが部屋の中に入ってきた。


「ご主人さまとはゆっくりお話し出来ましたか?」

「お陰さまでゆっくり話せました。」


泣き腫らした瞼を見られないよう伏し目がちに答えたつもりだけど、
葬儀のプロの方からしたらそんな場面は日常のよくある1シーンなのかもしれない。


「お通夜の打ち合わせをさせていただいてもよろしいですか?」

「はい。」

「今日の午前中、役所に行きまして死亡届を提出してきました。
本籍地は住民票と別のところにありますので除籍の手続きが終了するまで2〜3週間かかるそうです。」




この世からの『卒業式』まで…




刻一刻と近づいていった…








最後までお読みいただきありがとうございますニコニコ
過去ログもたくさんの方に読んでいただいてるようで嬉しいですキラキラ

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