耳鳴り、聴こえました。

今は何時なのか、気になってしまいます。


雪が解け始めると地面との段差が生まれるように、俺の立ち位置はいつもいつも不十分で日々に差があるようでした。

安定するというのは難しいことだ、あの子は笑えていたようだけれど。

鼻の下を擦り過ぎて触れていなくても違和感を感じる。

それぐらい普通に泣けたらいいのに。


陽の光は随分と温もりを持つようになったけれど、俺はまだストーブの傍から離れられないでいる。

気を楽にしてくれる方にも、何か意味を持ちたい。

良いことばかりを言っているつもりはないが、受け取ってもらったものはどれも嘘臭く見えるようだ。

うん、……どうもすまない。


優しいことと、意志が弱いことは違うと教えてくれたおかげで、昨日少し頭が良くなったんだ。


「脳みそは、溶けてなくなった方がきっといい。」


今この身体がもっと分かりやすくなるだろうな、と斜めに日差しを受けている。

同じように浴びているだろうに、俺の方がずっと白く染まっていて恥ずかしいんだ。

嫌いな春が塗り替えられていくのを、それだけを楽しみにして日々と季節を噛み砕いていこう、グラスの氷がすっかり水になってしまうまで。


さよならを告げるのか、左耳。

左の方から意識が遠のいたのを、しっかりと記憶して横たわらせておこう、さあ安静に。

あちらもこちらも引き伸ばしてくれ、肩周りがどうも酷いから。


大丈夫、あんな高さまではなりやしないよ、足下の草木が俺を馬鹿にしているように。

少し前のこと、ゆっくり思い出したいよ。