久しぶり。

まだまだ嘘ばかりついていますが、先日弟の誕生日があったので、多少は本音を書けるような気がしていますが、さて、どうだろうね。……

 

 

人を祝う時、近頃は花を買います。

大切な人の大切な日に何ができるか、随分前から悩んでいたんだ。

それで、考えて考えて浮腫んだ頭で花屋に向かうと、驚くほどに優しい気持ちで自然に選ばせて貰えた。

彼女のような、おまえのような、君のような、あいつのような、何処か懐かしい彩りを、自由に、好きなだけ。

 

『祝いの品は何を贈る?おまえなら、』

『…花かな』

なるほど、訳もない。

その理屈は、完璧だ、僕も見習おう。

そう言えば絵描きの友人も、花を買って帰っては静かに描き起こしているようだし。

足りないのか、そうかもしれないな、僕に足りないのは、あの花々のような綻びなのか。

そうして花を選んでいるうちに、僕は気付く。

何故だ、こんなに綺麗なのに、その中でもより整った形を探す、こんな時でも、僕は自分の、いや僕だけの責任じゃない、これはこんなのは、醜い人間の本能なのか、この指先か、この神経が?

余計な選別をしやがる!

ごめん、ごめん、あの子が好きな色なんだ、……色はどれも綺麗だ、申し分無い、ではこの花弁か、そんなのいちいち数えやしねえ、この枝も、蕾の付き方も、こんなに隅々まで睨み見てごめん、でも沢山、沢山あるから少しでも整った花を、美しくまとまった行儀の良い花を……。

 

ルールに則れない秩序のない僕が、あの上品な花々にきまりを求めるなんて、図々しいにもほどがあるぜ。

種もまかない、水も吸わない、土にも触れない、こんな指先で申し訳が立たない。

だから言えなかったんだ。

 

(プレゼント用にラッピングしてください)

 

別々に買ったやつ、束にしなきゃダメじゃん。

少しばかり短く切ってもらったけど、あれ、意味あった?

これからつくよ、その意味。

毎日、水をあげてね。

窓際に置いて、朝日を浴びた透明な花瓶と、花々の乱れた隙間を差すあの白い光の粒を、目を細めてじっくりと眺めてください。

日が昇りかけた薄黄緑の空のような気持ちを、たっぷりとあげたい。

物音一つ聞こえない、澄み切った脳が糸を張る。

顳顬、眼球、歯列、喉元、首筋、あちこちじゃなく、順番に巡って張り詰める。

今更、何も贈り合わない関係。

言及したいなら僕は拒む。

まあ確かに、僕は与えてばかりだし、あはは、その割りには何も返ってこないさ、笑っちゃうよね、おかしいったら、……。

はあ。

そう。

うん、なんでかなあ。

まあなんというか、家族は家族でしかないのだけれど、他人は他人として遠ざかる他はないですね。

僕に家族があって本当に良かったです。

友達もいて良かったです。

ただ、僕に花を贈ってくれるような気の利く方に出会えていないのが、絶望するくらいには残念ですね!

 

 

分かっています。

汚くて乱暴になりがちですが、貧しくはありません。

生まれ育った環境に一切の文句もありません。

全てにおいて程々に好んでいます。

愛しすぎたり嫌ったりするよりは、広い花畑を一緒くたに"すごい"とまとめて眺めるくらいが、丁度良いやもしれません。

そうは言っても、わざわざ屈んで一輪を見つめるような、細やかな人柄に惹かれているけれど。

僕のことも、隅には置けませんよね?

ちっぽけなことでいーんだよ。

神様、僕は誰も見向きもしないようなことにいちいち拘ってるんだから、そろそろ摘まれてもいいよな?

誰にも摘ませたくない芽もある、だからその人には花を贈ったんだ。

色水を吸わせた可哀想な花だ。

それこそが、人間的な美しさなんです。

その美にどれだけ惚けてしまったとしても、絶対に無駄だなんて言わせない。

 

 

花かな。

いや、嘘だよ。

綺麗に包装しようと思っても、家にはセロハンテープも無い。

だっせえ柄がゴテゴテについたマステが何個かあったような気がするけど、そんなので留めちまったら台無しです。

ここはなんとかあの透明なフィルムじゃないと、なんの変哲もないあの膜状でないと、僕はもう満足がいかない、僕に触れた空気さえも圧迫しないと気が済まない。

幅もねえから塞がらない、粘着力も期待できない、それでも透明である限りはどうしようもなく無敵なんだ、そうでしょう。

セロハン、いいですか、その親指が食い込みます。

 

嗚呼畜生、このセロハン、表だけのこのセロハン、水洗いがなってねえよ。