心臓が押しつぶされる感覚は確かにある。
胸の真ん中に徐々に負担がかかっていく。
大人の話を聞いているときは大抵、そう。
父、母の話を片方ずつ聞いているときも、そう。
愛しいほど、切なく、苦しく思われるのはあながち間違いではない。
どんな内容だろうと、赤ずきんの狼のように腹に石を詰められるような気持ちの感触も、気のせいではない。
僕はどこへ向かおうとしている?
気持ちのやり場など、自分自身という器以外に存在するはずもなく、夜の山道を下る細々とした街の明かりの一つ一つに呼吸が乱れていくようだった。
今日、仕事仲間に嫌味のように薄汚い笑みを浮かべて見せたことを、思い出して少し落ち込んでいるのかもしれない。
望んでやってしまった。
別に、僕以外の人間がどうやったって構いやしないのに。
どうしても僕は、あのときあいつの未来をほんの少し見たような気がして、許せなかったんだ。
…心臓が押しつぶされる。
僕はよく、何にも変わらない自分と、他人の未来を同時に想像する。
どうしてこうも、平行に並んで見えるのか、現状は僕のままで、相手だけがその先をどんどん生きていくのだ。
僕は変わらない。
根本は何も。
変わらない代わりに、戻ろうとしたくて、過去の曖昧な記憶を繰り返そうとする。
僕がヤバくなったら、よく知る友人の話題にすり替えて、いくらでも突くし、いくらでも噛み砕いて話をする。
僕には興味を持たせない。
ボロなんか出さない。
指摘なんかされない。
誰も、本当の他人なんか知れない。
いつかこの痛みを、多くの愛する人に味わってほしいと思う。
僕の話題で、僕の内容で、みんなの心臓に負荷をかけていこうと思う。
大好きな僕と、大嫌いな僕、どちらがいいと思いますか?
自分ではもうよく、分からない。
ただ、全部を受け入れてくれるようになったら、大抵僕は、友達を辞めます。
この痛みを忘れるくらいなら、大抵僕は、人間を辞めます。