『俺、長い爪って嫌なんだよね

君はどう?って、

ふーん。

いいね。ちゃんと短い』

 

ふたり寝転びながら

ひとりがひとりを品定め

嬉しいような傷ついたような

指先同士が触れたまま

『うん。まあ』と言った

 

 

その唇が嫌

結んだり開いたり

言葉のあれこれに

気持ちが飛び交ってしまう

 

その瞳が嫌

興味なさそうにこっちを見ないで

つまらなさそうに伏せないで

目が合ったなら、今度こそ

 

 

そうやって君は評価するけど

誰にだってそうするから

特別傷ついたわけじゃない

特別に傷つくわけもない

ふたりはお互いつまらないけれど

ふたりを壊すことはない

 

ねえ 本当は何気なく

だけど常々いつもの如く

なんでもないように

私のことを見ているの?

好きか嫌いかのどちらかを

触れてまで伝えようとしているの?

 

ふたりの爪は短くて

お互いを傷つけることはありません

 

愛し合うこともないけれど

傷つけ合うこともありません

 

触れてまで伝えようとしている彼が

それでも守ろうと手を繋ぐ

 

嫌なんだよね

嫌じゃないんだよね

触れているこの時は

私たちはふたりなんだよね

 

 

 

 

 

 

二枚爪を繰り返すみたいに恋人の二の舞に成らざるを得ない。

けれど、一緒にいる時はどうしても幸福を感じてしまうのです。