2022/12/06放送
マツコの知らない世界
https://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/
'宇宙についてぶっちゃけにきた宇宙飛行士'
野口聡一(ノグチソウイチ)さん(以下、野口)
野口「こんにちは」
マツコ「ねえ、ヤダ。想像より背が高くてイケる」
野口「よく言われます」
マツコ「でしょ。あたしね、これもう本題に入る前に言うけど、本当に『宇宙飛行士の野口聡一さんが誕生しました』ってニュースを見た瞬間から、これはイケる」
野口「ありがとうございます。ずいぶん前だからね。26年経つんですけど。今はちょっと」
マツコ「いや、今も。照れくさくて目が合わせられない。なんだろう」
ナレーション「宇宙に3回行った日本人、野口聡一さん」
マツコ「選ばれたときの聡一が見られる。かわいい」
ナレーション「それから9年後。スペースシャトルディスカバリー号で初めての宇宙へ」
マツコ「若い子、この打ち上げも見たことないんだもんね」
ナレーション「15日間国際宇宙ステーションに滞在、船外活動などのミッションをおこなった。2回目は4年後の2009年。ロシアの宇宙船ソユーズに日本人として初搭乗」
野口「ロケットの先っぽに小さなカプセルがついているスタイルで」
マツコ「スペースシャトルにもソユーズにも乗ったっていうのはすごい体験ね」
野口「そうですね、ありがとうございます」
ナレーション「その後、10年の時を経て、民間宇宙船クルードラゴンで三度宇宙へ。これにより、3つの異なる方法で地球に帰還したことがギネス世界記録に認定されるなど、野口さんは人類で誰も成し遂げたことのない経験をしてきたのだ」
マツコ「まさか民間のロケットで宇宙に行く時代がくるなんて思ってもいなかった」
野口「思ってないですよね。ボーイング社とかスペースX社が自分たちで宇宙船を造ると。造るだけじゃなくて、自分たちで全部もう準備から必要な訓練まで全部やると。こういうふうに時代って動くんだなって」
ナレーション「ちなみに、国際宇宙ステーションに8日間滞在するスペースX社の宇宙旅行の費用はおよそ74億円。そして、Amazon創業者ジェフ・ベゾスが設立したブルーオリジン社では、数分間の無重力状態を体験する小宇宙旅行がおよそ3400万円と高額だが、今宇宙に行くことは民間人でも可能な時代に」
マツコ「一回は行っておきたいよね、宇宙」
野口「外から地球を見る、地球が本当に存在するってだけで行く意味があると思いますよ。町中にフェラーリとかいっぱい走っているじゃないですか。あれたぶん3000万円より高い。だからそれを考えたら、フェラーリを買っているあなた、宇宙に行きませんか?」
マツコ「本当そうよ」
野口「一枚目のフリップからいきますか。宇宙に3回行った男が気づいたこと。宇宙って視聴率をとらない」
マツコ「そうですか?」
野口「思っているほど見てもらえてないっていうのがね、戻ってきてからやっぱりひしひしと感じるね」
マツコ「あたしなんかは好きだから、ISSから中継しているYouTubeとかあるのよ。ボーっと観ている」
野口「ええ?本当に?それは相当変わっていますね。僕も観ないもん。宇宙から帰ってきて、JAXAがいろいろ『この番組どうだ?あの番組どうだ?』みたいな中で、マツコさんとなにかやりたいって、本当最初に言ったんですよ。秘書がいるから嘘じゃないって」
マツコ「本当?」
野口「なかなか敷居が高くてね」
マツコ「違う。違いますよ。JAXAがやりたがってないのよ。あんなのと宇宙を近づけるなっていうね」
野口「なんで視聴率をとらないのか、良くないなと思って僕なりに理由を考えたんですけど。世の中の人に‘宇宙に行くこと’の本当の姿がやっぱり伝わってないんじゃないかなって」
マツコ「本当のこと言っちゃっていい?」
野口「本当の意味を伝えたい」
マツコ「言っちゃっていいのかしら。確かに、しかるべき人から日本が宇宙開発をやる真の目的はこうです、っていう発言って聞いたことがないですよね。確かに」
野口「ないでしょ、ないのよ。今ほらまた月に行こうとしていますよね。今そのために一生懸命ロケットも造っているし、新しい宇宙飛行士を選んでやっているんですけど。なんで宇宙に行くの?という話は微妙に避けている感じもあるし。ごまかしているつもりはないけど、ちゃんと答えてないなと」
マツコ「オカルティーな話とか、ちょっといろいろ聞きたいわよね、そこは。これ大丈夫?あたし消されない?大丈夫?」
《宇宙に行く理由①実は身近!?生活に役立つ宇宙技術》
ナレーション「莫大な資金を投入し、命の危険にもさらされ続ける宇宙での活動」
(宇宙での船外活動は、二人一組で作業し、命綱をつけて整備や実験装置の設置などをおこなう)
マツコ「こんなの絶対やりたくないわ。怖いこれ」
野口「命綱っていうのがなんか妙に安心する言葉なんですけど、ワイヤーですからね」
マツコ「最悪のとき用についているだけで、基本は使ってないんですよね?」
野口「基本は使ってないです。事程左様に宇宙は危険だと。生きて帰ってくることのほうが極めてレアであると。死んで当たり前。でもその中でどういう成果があるのかというのを、伝えきれていない。一つはやっぱりみなさんの生活に直接役に立っているっていうのをもう少し言っていかないと」
ナレーション「天気予報やカーナビ、位置情報などは、宇宙にある衛星システムのおかげであることはもちろん、スポーツ界ではGPSで選手の動きをデータ化し、けがの防止などにも役立てられている。また、宇宙空間で作業するために開発されたロボットアームは、医療の現場でも活躍。実はさまざまなシチュエーションでその技術は応用されているんです。さらに、宇宙の不自由な生活を解決すること自体が、地上で役立つ例も」
野口「有人計画って何が大変か。1番手間がかかるのは人間ですよ。ご飯食べて必要なものを摂ったあと、いらないものを捨てる。捨てたものの処理が大変。トイレであり。ちなみにおしっこは全部リサイクルしないる。昨日の誰かのコーヒーは、今日の僕のコーヒーになってるわけよね、基本的に」
マツコ「えっ?」
野口「そのままではないが」
マツコ「とんでもないろ過装置があるんですよね?」
野口「煮沸、沸騰させてその水蒸気だけを使う」
マツコ「残ったものは排泄物といっしょに」
野口「それは捨てるんですけど。汗も、エアコン回すと汗多い季節って水がポタポタ落ちてるじゃないですか。ああいうのも全部回収して。だから昨日の誰かの汗は今日の僕のコーヒー」
マツコ「野口さんのならいいかな」
ナレーション「そしてこの宇宙での貴重な水分確保の方法が、被災地や水不足に悩む場所でも活用」
マツコ「知ってた?」
番組スタッフ「知らない」
野口「あんまり宣伝しないんですよね、やっぱりね。そういうところがJAXAダメなんだよね。ちゃんと宣伝すればいいのに」
マツコ「いやいや。あたしはJAXAの味方ですよ」
《宇宙に行く理由②人類の火星移住計画の実態に迫る》
ナレーション「今年11月、2028年頃完成予定の月を周回する宇宙ステーションに、日本人の搭乗が決定。これにより、日本人初の月面着陸が現実味を帯びている。また、昨年にNASAは火星で遠隔操作での初のヘリ飛行を成功。人類の宇宙進出が加速していく中、二つ目の人類が宇宙に行く意味、移住計画についてマツコが切り込む」
マツコ「ちょっとオカルトになってしまうけど、やっぱり将来的に人類が地球以外にも住める環境はあるのかどうかっていうのは見てるのかな」
野口「はい、見ています」
マツコ「見ているのね、やっぱりね」
野口「そういう意味でスペースXを造ったイーロン・マスクは、やっぱりちょっと変わっている人で、彼は本気で火星に住めると思っている」
マツコ「でも野口さん、言えるかどうかわからないですけど、やっぱり火星は無理だったの?」
野口「ちょっと遠いよね」
マツコ「ええ?そんな理由なの?遠いっていう理由なの?」
ナレーション「遠いっていう理由なのよ。行って帰ってくるだけで3年って言われている。火星の場合は」
マツコ「でも技術が進んで、飛行機で行ってるみたいに火星と結ばれるのがゼロではないじゃない?」
ナレーション「そんな遠く離れた火星にイーロン・マスクは2030年頃に基地を建設する予定だという」
マツコ「月よりは、まだそういう生きる上で必要なものは、火星のほうが可能性は高いんですか?」
野口「一つはまだ薄いですけど、空気が、大気があるってことですよね。もう一つは、一時期水があった痕跡もあると。要は川が流れているっていう」
マツコ「それはもしかしたら今でもちょっと掘ったりとかすれば、水源がある可能性があると」
野口「じゃないかと。何年か前にマット・デイモンか出た『オデッセイ』でしたっけ、『The Martian』っていう。火星に置き去りになっちゃって、そこにあるもので植物を作り、空気を作り、みたいなのやってましたけどね。一個一個のネタになってる技術的なテーマは全部実際NASAがやっていることなんです。あんなにうまくはいきっこないけど」
マツコ「いやでもなんか、夢がふくらまない?それ想像すると」
野口「人類が活動のフィールドが広がっていく中で、そこにどう立ち向かっていくかでその後の100年が決まると思うんですけど、まさに今そこに僕たちは立っていると」
マツコ「超岐路に立っている。だって人間ってのは、なにが決定的に他の生物と違うかっていったら、知的なものへの止められない欲望」
野口「止められない欲望ね」
マツコ「大航海時代といっしょなのよ。たぶん当時帆船でスペインとかから大海原に出た人って。今それこそコロンビア号じゃないけどさ、スペースシャトルの宇宙に行った人と変わらないくらい怖かった。何もわからないものに対して立ち向かったんだと思うのよ。人類が避けて通れない進化への欲望なのよ」
野口「すばらしい。今のはいただきました。JAXA書いといて。全部使うから。来年の予算答弁で全部使う」
マツコ「そんなのには使わないでよ」
野口「使う使う」
《宇宙に行く理由③地球の現状&マツコ宇宙へ行く》
ナレーション「野口さんはこれまで宇宙から地球を撮影し、その壮大さをSNSなどで発信。その一方で、地球を観測することでわかる不測の災害を発見し、サポートすることもあるという。そんな地球の美しさと怖さを知る野口聡一さんが伝えたい、人類が宇宙に行く意味の3つ目が」
野口「宇宙に行ってわかった知られざる真実。宇宙から見た地球は絶景。だけれども実際はいろいろ考えさせられる。これ2つお話させていただくとですね、温暖化の問題ですね」
マツコ「宇宙からわかります?」
野口「はい。これは」
マツコ「野口さんが上から撮ったの?」
野口「私が撮りました。チリの端っこ。チリも南に行けば寒くなってくるので、氷河なんですけど、氷河が溶けていくんですよ」
マツコ「昔は川みたいに見えるところ全部氷河だったの?」
野口「そうです。あれがどんどん上流に上がっていっている。溶けている氷の量が多いので。これは今度逆に、北極圏で氷山を撮っている」
マツコ「対比するものが近くにあればわかりやすいんだけど」
野口「確かにそうですね」
マツコ「とんでもないでっかい」
野口「数十キロです。この1個のサイズが数十キロ」
マツコ「それだから先端が」
野口「徐々に溶けて」
マツコ「溶けちゃってはがれおちて」
野口「南側というか、ロシアのほうに来ているのがいっぱい見られるっていう」
マツコ「南極とか地肌見え始めたところが多いって言ってましたもんね」
野口「逆にそのおかげで、写真としてはきれいに撮れるんですよ」
マツコ「なるほど、今まで真っ白だったのが」
野口「それだけ温暖化がやっぱり進んでいるという。もう一つは、宇宙から夜の日本を見ると、そんなに働かなくていいのにと思う。夜の日本の明るさって、尋常じゃないんですよ。もちろんね、ニューヨークもきれいだしヨーロッパにもいっぱい夜明るい場所あるんですけど。日本って、日本列島がくっきりと見えるくらい明るいので、それだけエネルギー」
マツコ「だから東京だけじゃなくて、日本中みんな働いてるってことよね」
野口「日本中働いている」
マツコ「でもきれいだけどね。きれいなのよね」
野口「ちょうど今東京のあたりで美しいんですけど、やはり美しいと言っているものがエネルギーの使い過ぎだとすると、やはり考えちゃいますよね」
マツコ「あたし前にISSからの夜景を見たときに、大きな湖あるじゃない?あれに月明りが反射して月がくっきり映っているのよ。すごいきれいですよね」
野口「きれいですね」
マツコ「すごいな。あれ見たんだよ、野口さん肉眼で。そのつぶらな瞳で見たのね」
野口さん「ありがとうございます。だからなんか急に行きたくなってきたでしょ?」
マツコ「行く」
野口「やった。すばらしい」
ナレーション「そんな願望を持つマツコのために、上空400キロにある国際宇宙ステーションからの景色を疑似体験できるメタバースをご用意」
マツコ「あ、やーん。聡一が来た。運命の宇宙での出会い」
野口「近い」
番組スタッフ「地球見てください」
マツコ「今だから冒険に出たわよ」
野口「すばらしい。これでマツコさんも宇宙飛行士の仲間入り」
マツコ「あらけっこう今宇宙よ。これすごいな、この地球が」
野口「そう、地球をねすごく丁寧に作ってますよね」
マツコ「夜になったよ」
野口「これから朝日を見せてくれる。日の出が。僕すぐ後ろにいます」
マツコ「ヤダ、後ろから抱きしめられてるの?あたし。朝日を見ながら後ろから聡一に抱きしめられてるのね、あたし。夜が見たいね。夜モードってある?」
野口「あ、すばらしい。これたぶん日本列島じゃないかという」
マツコ「天草、五島列島とか見える」
野口「見えますね。天草きれいですね。福岡はすごい明るいから」
マツコ「福岡、小倉、久留米のあたりかな。これが熊本のあたりかな。坂出のあたりも光ってるね」
野口「左側が坂出で右側が高松だよね。この前サンライズ瀬戸に乗ったんです」
マツコ「岡山から瀬戸大橋線に乗ると、『瀬戸の花嫁』がかかるのよ」
番組スタッフ「ありがとうございます、メタバースオッケーです」
マツコ「ちょっと待ってよ!」
野口「このままでいいですよ。VRいいな」
マツコ「もうちょっと待って」
ナレーション「今年6月にJAXAを退職。現在は大学で宇宙での経験を活かした研究をおこなっている野口さん。そこで今回、マツコとどうしても話しておきたかったことが」
野口「宇宙に3回行って地球に帰ってきて、今思うこと。僕って何者なんでしょうか?」
マツコ「ほらだからやっぱりさ、『宇宙に行きたい』って思って本気で宇宙飛行士になる人って、ちょっとヤバい人だと思う。いやいや、本当にちょっと正常な精神では宇宙には怖くて行けないから。死生観が絶対変わると思うのよ。っていうことですよね?」
野口「はい、やっぱり戻ってきたときにね、燃え尽き症候群」
マツコ「燃え尽きるよ。だって宇宙行ってきたんだよ。もうやることなくない?」
野口「オリンピックの選手とかでも本当にメダル、メダル、メダル。勝つための人生っていうところから、日常生活に戻るときの感じる『自分には価値がないんじゃないか』って思ってしまうような。そういう感覚はやっぱり僕も襲われたというか。なにか共通するものがあるんじゃないの?っていうのが、今僕が取り組んでいるテーマ」
マツコ「そんなことやられているんだ、今、野口さん」
野口「生きづらさを科学するっていうんですかね」
マツコ「なにも考えなくなるのが人間の進化なのかなって考えるときあるんだよね。恐怖心だったり、悩みごとだったりとか。どんどん便利になって困難を克服した歴史じゃないですか。野口さんがやってる研究はたぶん、人間が生きていくうえで、すごくとても大事なことをやられていると思う」
野口「ありがとうございます」
マツコ「あたし研究しがいがありますよ。けっこう生きづらいほうだと思うよ。だから野口さんと結ばれやすいってことよね」
~完~