“そして、僕等は今日も、決して届かぬ星を想う”
猛暑日が続いた夏、夏日が続く秋。
今日も10月とは思えぬ気温の外とは違い、この部屋だけは涼しさを保っている。
形だけの書類に上辺だけの判子を押し、意味の無い紙切れが積まれ、山となり、やがては灰に。
その結末がやけに呆気ないのは、今に始まった事ではない。
もう嗤う事すら出来ない、変化無き日常。
それが、風紀委員長の仕事。
「…で、何で君が此処に居るの?」
これは日常となるのだろうか。
黒い革張りのソファーに座る、本来なら居るはずの無い人物。
不機嫌さ漂う声にすら笑顔を向ける行為に、覚えるのは微かな頭痛。
「今日も暑いな。」
「答えになってないよ。それとも、僕の言葉が通じなかったの?」
「恭弥に会いにきた。」
尚も笑顔を浮かべる山本から視線を外し、再び書類へ戻す。
言葉には出さないが、その行為が[邪魔だ]と告げている。
「さっきから判子ばっか押してて飽きねぇか?」
気だるそうに判子を押し、面倒臭そうに書類を変える。
何十回と繰り返され、ただ、積み重ねられる書類の高さだけが変動していくその様は、見ていて退屈だった。
もっと退屈なのは、雲雀の表情が初めから変わらない事。
「君には関係無いよ。」
灰となる紙切れが、また一枚増えた。
そして、また一枚。
飽きるなどという感情は、とうの昔に切り捨てた。
無意味な行為に無意味な感情はいらない。
ゼロに何を掛けようと、それはゼロ以外には成り得ない。
ならば、どんな感情を抱いたところで、無意味な事には変わりはしない。
「俺には真似出来ねぇな。」
独り言が虚しく響く。
続いて、歩く音。
一枚一枚と規則的に減って行く紙切れから、不規則に一枚減った。
「何するの。」
問い掛けではなく、疑問の投げ掛け。
答えは言葉とならず、徐々に変化していく紙切れが、疑問への答えとなっていく。
「紙飛行機。」
まるで子供のように笑う山本の手から、その物体が離れて行く。
それは真っ直ぐゆっくり部屋の中を飛び、床へと落ちた。
「馬鹿みたい。」
そんな事をしたところで、元は紙切れ。
何時かは捨てられ、燃やされ、灰になるだけ。
「そんな事して何の意味があるっていうの。」
「別に意味なんか無いさ。」
落ちた紙飛行機を拾い、飛ばし、着地するは雲雀の机。
「結構、飛ぶもんだろ?雲雀もやってみるか?」
「やらない。」
着地した飛行機を残念そうに掴み、そのままソファーへと戻り、飛行機を飛ばす。
それは見事な軌跡を描き、ゴミ箱へと吸い込まれていった。
辿る道は違えども、行く末は所詮決まっている。
何をしても何も変わらない、結末は同じ、願った所で願いなど叶わない。
「仕事サボッて何処か行かねぇか?」
日常の変化を願い、非日常が続いたら、それは新たな日常に。
変化は絶えず変化し続けなければ、しかし、それは生易しい事ではない。
そして、結末はどっちにしろ同じ。
「…君が居ると仕事が捗らない。」
雲雀の手から判子が離れ、立ち上がり起こった風で紙切れが舞った。
拾われる事なく、空となった部屋。
閉ざされた空間には途切れた日常、ドアの向こうには絶えず続く変化。
結果は同じと知りながら、
結末は変わらないと理解しながら、
それでも、
決められた運命を拒むように、
僕等は自分だけの終幕を得る為に、もがき続ける。
タイトルと内容の関連は極限に薄いです。
突発的に書きたくなった山ヒバ。
非日常が続くと日常になるんですよ、本当に。
