焼け落ちない木造建築
柔らかい風合いで人気の木造建築。木は二酸化炭素を吸収して育つ材料で、地球温暖化防止のためにも利用を促進したい。だが火に弱いのが泣き所。学校や、4階建て以上の建物などは建築基準法で「耐火構造」を求められ、現状では木で作りにくい。燃えにくい木材を開発し、木造の学校やマンションを増やせないか。森林総合研究所(つくば市松の里)の原田寿郎(としろう)・木材保存研究室長たちは、大手ゼネコンと共同で、こんな研究をしている。
「耐火構造」は法解釈上、火事の際、消火作業なしでも焼け落ちず、周囲への延焼もしないことを意味する。
通常の木の柱を加熱炉で炎にさらすと、炉の火を落とした後もくすぶり続けいずれ焼け落ちる。これでは耐火失格だ。
原田さんたちは、スギの柱に難燃剤を入れる方法を開発した。
35センチ角の柱(長さ3・3メートル)の、表面から深さ1~7センチの部分に、窒素やリン酸を含む薬剤を、約30キロ注入する。
この薬剤は加熱されると泡を出す。木を加熱すると、中から燃えやすいガスが出て炎が上がるが、泡はガスの濃度を薄めて燃焼を抑える。
この柱に、炉で1時間炎を浴びせて945度まで加熱し、丸1日後に様子を調べた。表面から約4センチのところまでは炭化していたが、燃焼はそこで止まり、奥は焼けていなかった。国土交通省から「1時間耐火」の認定を受け、4階建て以下に使える耐火構造の材料として認められた。
5~14階建てには、さらに厳しい「2時間耐火」の認定が必要だ。こちらは47センチ角とさらに太い柱を使い、注入する難燃剤を増やすことで実現のめどが立った。
課題はコスト。難燃剤を入れる部分が必要なため、柱は通常より太くなる。注入にも特別な技術が必要で手間がかさむ。「普通の柱の2倍程度にコストを抑え、何とか最初の建物を1棟建てたい」と原田さんは話している。【高木昭午】=おわり
==============
■ことば
◇森林総合研究所
旧農商務省林業試験所として1905年に発足し現在は独立行政法人。森林の保全や管理、地球温暖化への影響予測、生態系の解明などさまざまな研究を行う。つくば市の本所のほか、北海道から九州まで全国に支所がある。常勤職員約1200人、年間予算は約740億円。