学校帰り、自転車で帰っていると遠くに母の背中が。

「和子〜!今帰り~?」

大きな声で母を呼んでみた。

「もう、人前ではさん付けかお母さんって言いなさいっていっているでしょ?」
「いいじゃん、どこからどう見ても親子なんだし!仲が良いってアピール!」
「何言ってんの?兄弟と思われるじゃん(笑)」
「それ、無理だし(笑)」
父がいなくなり5年。
辛い顔を見せず、いつも明るい笑顔と冗談を言いながら
2人して生活をしている。
 
「学園祭の準備、進んでいる?」
「う~ん、ぼちぼちかな?」
 
たわいもない話、いつもの事
自転車を押しながら話す
並んで歩いていると、母の肩越しに街の景色が見えた。

「お腹すいた!」
「なんなん!」
「若いんやからげんきあるやろ?後ろに乗せてよ!」
「はっ!わけわからんし。和子がこぎーや」
「親を労るのが子供の義務やん(笑)。
なん?それともご飯。あんたが作るん?」

「…」
「じゃぁ、ご飯作る代わりの対価やね!」
「警察に捕まったらどうするん?」
「そん時はそん時(笑)」

久しぶりに母を後ろに乗せて漕ぐ自転車。
なんだか妙にペダルが軽い気がした18歳。
「ねぇ、高校卒業したらどうしたい?」
母が珍しく聞いてきた
「就職しようかな。稼がないと」
「はっ?なん言いよるん。音楽の先生になりたいんやないん?小学校の時から言いよったやん」
「…。今でもそう思うけど、和子にこれ以上負担をかけたら悪いし」
「親になん気を遣いよるん!そんな気遣いいらんから自分がやりたい夢。叶えなさい!それが親にとって、一番の孝行なんよ」

その時の和子の言葉。
その時は理解できなかった。
ただただ、私がいる事で負担をかけているとばかり思っていたから。


中学の音楽教師になって5年。
子供も3歳に。

でも和子はいない。
子供の顔は見てもらえたけど
大きくなった子供のそばにはいない。

私は和子みたいな親にこれからなれるのか。
10年先、子供にちゃんと向き合えるのか?
不安で仕方がない。

でもね。母さん。
貴女の背中を見て育った私です。
色んな不安や乗り越えていけないことは多々あるでしょう。
大丈夫。やっていきます。
子供が大きくなったら、貴女の話を沢山聞かせます。
私を守り、暖かく見守っていてくれたことを、