プラハの天気予報では来週は最低気温が-20℃前後になる日もあるようで、昨日からまた雪が降りました。

 

 窓から見えるよそのお家のバルコニーには、+3℃あたりを切って以来ほぼ冬の間じゅう完全に冷蔵庫扱いになっているところもあり、話には聞いていたもののやっぱり本当にそうやって使えるのか……と思ったりします。

 

……

 

 風邪の話が続いたのでもうひとつ思い出したのが、昔読んだ漫画『異国迷路のクロワーゼ』の印象に残っていたシーンのひとつに、渡仏して間もない日本人の少女・湯音(ゆね)が風邪を引いてしまう回がありました。

 

 身近なフランスの人々から体を冷やすようにと冷たいお風呂をすすめられるのですが、(彼らの優しさや気遣いなので断り切れず押されながらも)彼女が、日本では風邪を引いたら温かいお風呂に入ってお布団に入って寝ます、というシーンです。

 

 着物と足袋、畳と布団、水を惜しまない温かいお風呂、お米と醤油と味噌……という日本文化から遠く離れたフランスで、パンとチーズ、コーヒーと牛乳、高いベッド、貴重な水、かかとの高い靴や身体に変形を強いる女性の衣服……という異国の文化に囲まれて暮らし始めた少女が、生活の急激な変化から体調を崩し、熱に浮かされながら寝具を床に下ろして床で寝るシーンには、初めて読んだ時は涙腺が緩んでしまいました。

 

 (実は映画『クロコダイル・ダンディー』でも、アメリカの大都会ニューヨークのホテルと、そこに泊まるオーストラリアはアウトバック出身のミックの生活スタイルの対照でも涙腺が緩んだというのは内緒。)

 

 物だけでなく精神やふるまいの点でも違う文化を縦糸に、国や文化が違っても共通する点(家族を大切に思う心やそのための自己犠牲もいとわないほどの愛情、他人への思いやりの明暗、身分という壁に阻まれる恋心など)もまた横糸として描かれていたのも素敵で、大好きな漫画のひとつです。

 

 作者である武田日向先生のご冥福をお祈りいたします。『GOSICK -ゴシック-』シリーズのイラストも好きでしたが、私は特に『狐とアトリ』『異国迷路のクロワーゼ』が大好きでした。

 

 繊細で美麗な絵、心震わせる描写で紡がれる物語、厳しい現実もありのまま描かれる一方でいつもどこかにある人の優しさなど、何度読み返しても心に触れるものがある漫画のひとつだと思っています。