その日はちょうど、七夕の日の昼下がり。
織姫と彦星の、年に一度の逢瀬の日。
そんな日に、こともあろうにマムシに噛まれるなんて…。
って、逢瀬のひとつもない侘しい七夕に、
何の因果か、私はマムシと出くわしたのでした。
我が家の前の川沿いの、
フェンス際に挿し木した利休梅の根元の草をむしっていた時でした。
「痛っ‼」
一瞬棘が刺さったのかと思いきや、目の前の蛇の目と、目が合う。
ま、まさか、マムシ!?
やがて噛まれた右手中指が疼くように痛みだし、第二関節からは、鮮血が!
一瞬頭が空転するも、即、医者に行かねばと、
財布ひとつだけ握って、車で数分の小さなクリニックへ。
すると何と、休み時間。
ピンポンしても、返事がない。
近くで畑仕事をしていた殿方に事情を話すと、
「ここじゃあだめだよ、マムシだったら血清を打たないとだよ。他に急ぎな!」
と言われ、パニクル私。急いで別のクリニックに行くも対応できず、
大きな病院へ行くしかないことを知る。
そこでハッと気づいたのは、携帯を持って来なかった自分‼
またもや空転するも、近くの交番に緊急電話があることを思い出す。
繋がった隣町警察署の救急車の手配に、血圧がやっと下がった感。
にも拘らず、搬送先が決まらずまた上昇。
その間、
ふたつの牙の傷跡を見つつの隊員から蛇の写真を見せられて、
‶テキ〟はやはりマムシだと断定。
そして長いと感じた数分後に、やっと程近い大学病院に搬送が決まった。
本当はここで、
パンパンに腫れた中指の写真をお見せしたかったのですが、
削除してました。見苦しいものは証拠隠滅です。
皆さまは1、5倍に腫れあがった中指を、想像してくださいませ。
ネットで画像を検索しますと、マムシ被害は子供や動物にもあって、
田舎暮らしの油断、ありありなのでした。
で、恐るべしマムシ画像の代わりに、可愛い写真を。
我が家の庭に咲いたバラの揺りかごに、ご満悦の雨蛙くん。
この笑顔、田舎暮らしのひと時の、小さな幸せでした。
おっはよ~~
さてとです、
救急サイレン高らかに、大学病院に到着。
カチャカチャと、せわしくストレッチャーで運ばれて、皮膚科診療室へ。
横たわる私の周りには、若き男女の医師たちがぐるりと5、6人。
その内の、ひげもじゃ小太り体躯の男性医師が
我が指に麻酔を打ち、次に傷口を切開。
毒を絞り出すのが分かる。
そして包帯が巻かれると、今度はイケメン医師が、
私の顔を覗き込んで、こう言った。1週間の入院になりますよと。
ええ~、1週間もですか~?
だって今、不動明王像の制作中なのに~~~!
ここで話を端折ります。
入院なんぞが初めてのことならば、病院食も初めて。
プラスチックの食器の味気無さをしみじみ思うものの、
どこへ行くにも点滴と一緒体験を少し楽しんでいる自分がいて、笑えた。
ところが2泊目の夕食時、流れが一変。
世間ではじわじわと、
長期コロナ禍の序章が始まっていたのでした。
つづきは、次回へ。
* * *
3年前の、マムシに噛まれた夏の記憶今さら編ですが、
コロナスパイラルは3年後の今も終息が見えません。
その間様々な対応と変化とともに、水面下での諸々が見える化しています。
私のこのマムシ事件も然り。
医療界のひとつの‶変〟が見えましてございます。
* * *
次回、2回に分けての記事になる予定です。
想定外の展開ですが最後には、ちょっとしたオチが。
私め、仏像を作っているせいでしょうか、
そのオチ、やや摩訶不思議かもぅ……?