CD「あるやなしやの音を聴く」

 

 

今住むこの町に住むようになったばかりの頃、

散歩はいつも、手を伸ばせばいつでも手が届く、里山。

都会を離れ、田舎暮らしにも慣れたものの、

当初の新鮮な印象は、今でも心に焼き付いている。

ところが、ときが16年も流れると、

無残にも、それらは上書きでかき消されてしまった…。

 

この町だけが特異なわけじゃなく、よく聞く話である。

 

 

知るということの一面には、一種残酷さがはらんでいる。

それをいやというほど知った今だからこそ、

今は懐かしいあの頃に紡ぎだされた歌詞を、

久しぶりになぞってみた。

 

山のかいな(腕)に抱かれたら 聴こえてくるのは何の音

木もれ陽ちらちら光る音 風が届けるお山の願い 茅葺屋根の寺の鐘

土の揺りかご子守歌 あるやなしやの音を聴く

 

森のかいなに抱かれたら 聴こえてくるのは何の声

木霊が囁く内緒話 さなぎの背中が割れるとき 湧き出る水の遊び声

おじぞうさまの子守り歌 あるやなしやの声を聴く

 

時のかいなに抱かれたら 聴こえてくるのは何の音

聴こえたはずの母の鼓動(こえ) 耳を澄ましたかくれんぼ 雷親父の拳骨飛んだ

じーじとばーばの子守り歌 あるやなしやの声を聴く

 

空のかいなに抱かれたら 聴こえてくるのは何の音

雲がつむいだおとぎ話 甘くて酸っぱい恋の歌 願いを込めた流星(ほし)の音 

時の流れの子守り歌 あるやなしやの音を聴く

 

 

 

 

 

旅先で出遇った、ぽつねんとした茅葺屋根の小さな家。

 

 

妙に懐かしかったのは、なぜ・・・。

 

 

懐古・・・・・・。