CD「あるやなしやの音を聴く」
今住むこの町に住むようになったばかりの頃、
散歩はいつも、手を伸ばせばいつでも手が届く、里山。
都会を離れ、田舎暮らしにも慣れたものの、
当初の新鮮な印象は、今でも心に焼き付いている。
ところが、ときが16年も流れると、
無残にも、それらは上書きでかき消されてしまった…。
この町だけが特異なわけじゃなく、よく聞く話である。
知るということの一面には、一種残酷さがはらんでいる。
それをいやというほど知った今だからこそ、
今は懐かしいあの頃に紡ぎだされた歌詞を、
久しぶりになぞってみた。
一
山のかいな(腕)に抱かれたら 聴こえてくるのは何の音
木もれ陽ちらちら光る音 風が届けるお山の願い 茅葺屋根の寺の鐘
土の揺りかご子守歌 あるやなしやの音を聴く
二
森のかいなに抱かれたら 聴こえてくるのは何の声
木霊が囁く内緒話 さなぎの背中が割れるとき 湧き出る水の遊び声
おじぞうさまの子守り歌 あるやなしやの声を聴く
三
時のかいなに抱かれたら 聴こえてくるのは何の音
聴こえたはずの母の鼓動(こえ) 耳を澄ましたかくれんぼ 雷親父の拳骨飛んだ
じーじとばーばの子守り歌 あるやなしやの声を聴く
四
空のかいなに抱かれたら 聴こえてくるのは何の音
雲がつむいだおとぎ話 甘くて酸っぱい恋の歌 願いを込めた流星(ほし)の音
時の流れの子守り歌 あるやなしやの音を聴く
旅先で出遇った、ぽつねんとした茅葺屋根の小さな家。
妙に懐かしかったのは、なぜ・・・。
懐古・・・・・・。