政府は11日、医療・介護の費用の伸びを一定水準に抑える方法を検討する専門調査会を社会保障制度改革推進本部のもとに置いた。都道府県ごとの医療費の支出目標を算定する方法を2014年度までに固める。都道府県が25年度の医療提供を描く「地域医療ビジョン」に反映する。介護も同様に取り組む。


  都道府県ごとに医療費支出目標の上限を算定するという方針ですが、売り上げ目標と違い、市民の医療費支出に目標を立てるというのは困難な話です。高齢化という事象だけでなく、医療研究の高度化に進み、医療で延命できる難病も増えてきました。政府は特定指定の難病についても障害対象と定めたため、医療だけでなく障害給付の適用となり、医療対象の幅も増えています。さらに、健康に着目した報道、情報番組も多くされるようになってきて市民の医療への関心も高まっている中、医療・介護の費用の伸びを一定水準に抑える事は、明確な具体策が提示されないと、都道府県での対応も混乱するのではないでしょうか。


 国としては、レセプト分析、ビックデータ活用、健康寿命を延ばす事で費用が減る事を模索するという3本柱で医療・介護の費用抑圧を考えています。しかし、その全体像と具体的方向性が見えにくいため、現場の社会福祉関係者も、「要介護切り捨て」「医療削減による在宅介護者の困窮」といった印象を感じることにつながっています。


 当方が考える解決策として、レセプト分析とビックデータを活用したなら、その解析による医療費問題をわかりやすく厚生労働省が公表する事です。削減が可能な事項なのか、生活習慣を改める事で医療費がどれだけ変わるのか、延命治療の可否、安楽死問題、精神医療。こうした情報提供を進め、国と当道府県、市町村、会社、国民のそれぞれの役割分担と責任を明確にし、国が強い指導力を示さないと、方向性が見えません。


 6月に成立した医療介護総合推進法は、サービス提供体制を改革し、地域包括ケアシステムの構築を目指す内容です。ここはまさに市町村対応で介護の充実が決まっていく部分であり、地域介護力が問われます。支え手をどうするのか、地域力(ボランティアや近隣関係、地域組織)をどう高めるのか。ここも市町村任せにするのではなく、あるべき地方自治の形を政治が明確に示すべきです。北区では「行政と区民の協働」を姿勢として示していますが、医療・介護の費用抑制について国が基準を考えている現在、「行政と政治の協働」「区と都の役割分担明確」についても行政が働きかける事が必要です。国からの指示待ち、都からの連絡待ち、決められた法律と厚生労働省通達に従うだけでは、対応が後手になります。さらに言えば、議員が資質だけでなく専門知識と福祉に関する知識について学ぶ取組が重要です。