雨の日の公理 | TUAD文芸 ファンタジー班のブログ

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1期生によるエッセイ集

ひからびる寸前に大雨が降ってきたのだ
もちろん天の恵みなどではない
空がおれを叱咤してくれているのだと信じたい

水たまりの中に沈んだ砂利道の上をゴム草履をはいて歩くと、足のかかとにばかり小さな粒がこびりついていく。
つま先には、なぜか付かない。
おれの姿勢が歪んでいるせいだ。
でもこの姿勢は、おれが20年間の中で身についた数少ない個性なのだ。左右に体を振りながら、がに股で、左右の肩の高さが違う男が道を歩いていたら、それは十中八九、自分なのである。
自分を自分たらしめる不格好なら、それは甘んじて受け入れるべきだろう。
毎日、この小屋のような部屋に入るまえに足を洗う手間がかかるとしても、それを矯正してしまったなら、それはおれの部品との死別にほかならないのだ。
だから雨の日は、いつも玄関先に布切れを置いて家を出る。